2011年4月21日(木)「しんぶん赤旗」

経産省原子力安全・保安院の職員

原発企業から多数採用

安全規制業務 出身企業担当も


 経済産業省原子力安全・保安院に、原発メーカーや電力会社などの企業出身者が多数採用されていることが、日本共産党の吉井英勝衆院議員の調査で明らかになりました。職種は、安全規制の業務にあたる原子力保安検査官など。なかには出身企業が作った原発を担当する例や、退職後に元の企業に再就職した例もあり、これで安全規制の実効性が保てるのか、が問われています。(中村秀生)


 経産省が吉井議員に提出した資料によると、保安院が設置された2001年以来、民間から採用された職員は少なくとも82人にのぼります。出身企業などの内訳は、原発メーカーの東芝が22人と突出しているほか、関西電力とIHI(旧・石川島播磨重工業)が6人、三菱電機が5人など(別項)。採用時の職種は、50人以上が原子力保安検査官で、安全審査官や原子力防災専門職などにも採用されています。

 保安検査官は、全国各地の原子力施設近くに置かれた21カ所の事務所に約100人が常駐し、安全規制と防災対策を担当。原子力施設の巡視点検、保安規定の順守状況の検査、トラブル発生時の現場確認などを行います。

 民間出身の82人の中には、出身企業が作った原発の安全規制業務に関わる事務所の保安検査官として採用された例が複数あります。例えば、福島第1原発4号機には日立製作所が、その他の号機には東芝がメーカーとして関わっていますが、同原発を担当する保安検査官として、東芝や日立からも採用されています。

 また、JR東日本、鹿島建設、グローバル・ニュークリア・フュエル・ジャパンから採用された3人は、退職後、元の企業に再就職しています。

 一方、「原子力の推進機関とは独立した中立的な立場で行政機関や事業者を指導する」として内閣府に設置されている原子力安全委員会でも、事務局に原発関連企業から複数を採用。内閣府が吉井議員に提出した資料によると、09年4月1日から今月4日までの2年間で、三菱重工業と日立GEニュークリア・エナジーから規制調査官として各1人、原子力産業界の中核組織である日本原子力産業協会から技術参与を採用しています。


 原子力安全・保安院 原子力エネルギー利用に関する活動の安全規制をつかさどる組織。経済産業省のもとに設置され、原子力施設の設計・建設段階での許認可業務、運転段階での検査業務、原子炉の廃止措置計画の認可などを行います。原子力のほか、鉱山・火薬・都市ガスなどの産業保安規制の業務も行います。職員は約800人。


 出身企業などの内訳(カッコ内は人数)…東芝(22)▽関西電力、IHI(6)▽三菱電機(5)▽JR東日本(4)▽日立製作所、グローバル・ニュークリア・フュエル・ジャパン、東芝プラントシステム(3)▽パブコック日立、富士電機システムズ、検査開発(2)▽日立エンジニアリングサービス、清水建設、三菱マテリアル、鹿島建設、トランスニュークリア、竹中工務店、茨城日立情報サービス、東芝ソリューション、東洋エンジニアリング、高速炉技術サービス、原子燃料工業、東北電気保安協会、東京電力、COEジャパン、佐藤工業、アプライドマテリアルズジャパン、大成建設、日鉄パイプライン、N・TEC大分、伊藤忠テクノソリューションズ、東電設計、日本航空インターナショナル、総合地質調査、テプコシステムズ(1)。


規制業務の独立不可欠

調査の吉井英勝議員の話

 原子力の安全規制業務に、原発の設計や建設など企業で能力を培ってきた民間の技術者を登用し、力を発揮することは大切なことです。しかし技術者が社会的責任を自覚し、誇りと良心をもって国民の立場で規制業務を行える体制になっていなければ、国民の信頼や理解は得られません。

 もともと保安院は、原子力を推進する経産省のもとにおかれており、本来の「規制機関」と言えるものではありません。推進行政から完全に独立し、業務を行うために十分な体制をもつ規制機関を確立することが必要です。

 規制業務の信頼性や実効性を保障するためには、民間から採用された技術者が将来にわたって出身企業に再就職しないなど、元の職場の影響から完全に離れることが大前提です。出身企業が直接関わっている原発を担当させないなど人事面の工夫、技術者一人ひとりが安全神話と決別することも求められます。

 原発企業だけに人材を依存しないためには、日本原子力研究開発機構などで安全研究を進めるとともに、設計や実験で経験を積んだ研究者が規制業務に関われるような人材育成も必要です。





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