2011年4月20日(水)「しんぶん赤旗」

主張

障害者基本法改正

「私たち抜き」で決めるのか


 障害があることで差別やさまざまな不自由を強いられる社会か、障害の有無にかかわりなく地域社会で共に自立して生きることが確保された社会か。日本社会のあり方が大きく問われています。

 国連の障害者権利条約の批准に向けた障害者基本法の改正作業が、大詰めを迎えています。政府が示した法案は、当の障害者らが「あまりにも不十分だ」と強く批判しているものです。この声を聞かず、政府案を障害者の頭越しに決めるべきではありません。

「権利の主体」明記を

 2006年の国連総会で採択された障害者権利条約は「21世紀最初の人権条約」といわれます。障害者の平等と参加をうたったこの条約を本当に日本社会に生かすためには、国内の関連法を抜本的に見直すことが欠かせません。

 民主党政権は、09年12月に、総理大臣を本部長とする「障がい者制度改革推進本部」を設けて「集中的な改革」を行うことを約束しました。「私たち抜きに私たちのことを決めないで」という運動の精神をふまえ、障害者やその家族が構成員の半数以上を占める「推進会議」を政府内に置き、基本法改正の議論を重ねてきました。

 ところが、政府が最終的に示した改正案は、「推進会議」が2次にわたって出した意見を反映したものではなく、権利条約が示す新たな人権の国際水準にも到底及ばないものでした。

 障害者の権利について、障害者を一方的に福祉施策の「対象」ととらえる「上から目線」の人権観を改め、障害のない人が持つのと同じ基本的人権を享受する「権利の主体」だという見方に立つことが必要です。政府案にはその理念が決定的に欠けています。

 たとえば、障害者が地域で生活する権利の保障は「可能な限り」という留保つきです。数十万人の障害者が、地域生活支援が十分でないために施設などで暮らすのを余儀なくされています。自分の住むところは自分の意思で決めるというだれもが持つ当たり前の権利が、障害者には保障されていない現状を改めなければなりません。

 政府は“権利を実現するには財源が必要だ”と、財源論を持ち出して権利を明記することに抵抗しています。これでは障害者の人権は守れません。小手先の国内法一部手直しで条約批准をねらった自公政権時代への逆戻りです。障害者の声を聞くような姿勢をみせ、期待を膨らませながら、結局、失望だけを残す民主党政権のやり方はたいへん罪深いものです。

 ▽障害者が大変な思いをするのは社会に問題があるという「社会モデル」での障害の定義▽障害者への所得保障の明記▽差別の禁止、障害に応じた合理的配慮をしないことが差別であることの明記―など、障害者が望む法改正とするために、どうしても改善すべき点が多数あります。

よりよい法改正を

 政府がどんなに抵抗しようとも、国際水準の人権保障を日本に根付かせようとする流れを押しとどめることはできません。

 障害者が生きやすい社会は、だれもが人間として尊重される、やさしい社会です。高齢化社会を迎え、だれもが障害を持ちうることを多くの人が感じています。今後の国会の議論を通じて、よりよい基本法改正を実現すべきです。





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