2011年4月19日(火)「しんぶん赤旗」

障害者の権利薄める

内閣府 基本法改定案を示す


 内閣府は18日、障害者権利条約批准のために改正が求められている障害者基本法の改定案を「障がい者制度改革推進会議」に示しました。

 改定案は、障害者が地域で生活する権利や、意思疎通のための手段の保障について、「可能な限り」との文言を盛り込み、障害者の権利という位置付けを薄めました。委員からは、「憲法22条(居住、移転の自由)を制約するもので憲法違反ではないか」として、「可能な限り」をとるよう求める意見が出ました。

 障害の定義について改定案は、これまでの「身体障害、知的障害又は精神障害」に「その他の心身の機能の障害」を加えました。また「継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける者」を、「障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるもの」と変更しました。

 変更について事務局側は、「発達障害、難病などすべて含んだ規定」だと説明。言語に関しては、「手話だけでなく、その他の非音声言語も排除されるものではない」としました。

 改定案には、障害のない人と同じように権利や自由を保障され行使するための「合理的配慮」が規定されました。しかし、「『合理的配慮』に欠けることが差別に当たることが条文上、明確でない」との批判が出ました。合理的配慮とは、車いすの人のためにスロープをつける、視覚障害者のために点字で受験できるようにするなどの制度や設備の調整や変更のことです。

 日本障害フォーラム(JDF)を代表して発言した森祐司氏は、改正案について「私たちのまとめた『第2次意見』と大きな乖離(かいり)があるといわざるをえない。今後の国会の議論でさらなる改正を求める」と述べました。


解説

“障害者抜きに改正決めないで”

 国連の障害者権利条約批准に向けて政府が「抜本的な改正をする」としていた障害者基本法。国内関連法整備のためのベースとなり、障害者制度改革の“第一歩”ともいえるものです。しかし、18日、障がい者制度改革推進会議に示された同法改定法案は、障害当事者が参画して改正に向けて議論を重ねてきた同会議の経緯を十分反映したものとなっておらず、「抜本改正」からほど遠い内容となっています。

 その背景には関係省庁の抵抗がありました。昨年末同会議が提出した、第2次意見取りまとめの素案に対し、各省庁から「法の目的」や「障害の定義」などについて反発する見解が出されました。

 「推進会議の議論が完全なかたちで反映できなかったことを恥じたい」。18日の同会議に出席した内閣府の園田康博政務官はこう述べ、内容が不十分であることを認めました。

 日本障害フォーラムの政策委員長を務める森祐司委員は、手話を言語として盛り込んだことと推進体制の権限が強化された点を評価する一方、「推進会議でまとめた第2次意見の内容と大きな乖離(かいり)がある」と批判しました。

 審議の場が国会へ移る同改定法案。園田政務官は「今後の議論で前進させたい」と強調しました。

 国会では同会議の意見を反映した議論を展開し、障害者権利条約制定時のスローガンである「私たち抜きに私たちのことを決めないで」の精神にのっとり、問題点や課題を改正する必要があります。(岩井亜紀)





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