2011年4月16日(土)「しんぶん赤旗」

政府の構想会議

議論の前から「震災復興税」

被災地の声聞かず東北モデル

生活・地域再建を土台に上からの押しつけでなく


 東日本大震災の復興ビジョンを策定する「復興構想会議」の五百旗頭真(いおきべまこと)議長が14日の初会合で、「東北モデル」とセットで復興財源として「国民全体で負担」する「震災復興税」の創設を打ち出しました。五百旗頭氏は今回の震災被害について「16年前の(阪神・淡路大震災の)被災がかわいく思える」とも発言。「復興」を上から押しつけようとする危険な動きが早くから浮き彫りになっています。(高柳幸雄)


 復興構想会議は、「復興に向けた指針策定のための復興構想について幅広く議論を行う」(閣議決定)もの。五百旗頭氏をはじめ、建築家の安藤忠雄氏、政治学の御厨貴(みくりやたかし)東大教授のほか、被災県の知事、脚本家、僧侶、会社役員など15人が委員。6月末までに第1次の提言をまとめるとしています。

 大震災から1カ月余。被害と犠牲者の全容はいまだにつかめないままで、福島原発事故が追い打ちをかけています。安定した避難所の確保や希望者全員が入れる仮設住宅の建設、雇用・農漁業・中小企業を守る手だてなど、被災者の生活支援は引き続き緊急の課題です。

 しかし、政府・与党から強調されるのは「いよいよこれから人命の救済・救援から復旧・復興へと歩みを進めなければならない」(菅直人首相、12日の記者会見)という、国が上から押し付けるともとれる「復興」論です。今回の復興構想会議も「単なる復旧ではなく、未来に向けた創造的復興を目指していく」(開催趣旨)ために設置され、菅首相は同会議に「復興の青写真づくり」を求めています。

 復興というなら、被災地の住民自身が今後の地域のあり方を考えて復興計画をつくってこそ再建・復興に向けた活力を引き出すことができます。

 実際、復興計画に向けた議論を開始している市町村もあり、岩手県釜石市では、地域コミュニティーに配慮した仮設住宅の建設、仮設商店街の形成などを検討しています。そうした市町村の声を聞くことなく、上からの押し付けでは真の被災地の復興とはなりません。

 財界も復興財源のあり方として「国民全体の負担」を政府に迫ってきました。経済同友会は14日発表の「緊急復興アピール」で「国民に広く負担を求める復興税の導入など、幅広く検討することを求める」と提言。それに先立つ6日の提言では、法人税減税中止による財源確保は「慎重に検討すべきだ」としています。

 広く国民の英知を集めて復興を議論するはずの会議で、真っ先に財界の要求にくみするような増税が出てくることは重大です。

 日本共産党の市田忠義書記局長は13日の各党・政府震災対策合同会議で、復興では「被災者の生活再建と地域社会の再建を土台にすべきだ」と提起し、復興計画についても「国が上から押し付けるやり方はとるべきではない」と強調しました。

 財源についても日本共産党は、大企業・大資産家減税を中止するとともに、不要不急の大型公共事業の中止、米軍への「思いやり予算」の中止など歳出全般を見直すよう提案。従来の国債とは別枠で「震災復興国債」を発行し、大企業に引き受けるよう要請し、滞留しているため込み金を活用させるよう求めています。





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