
2011年4月13日(水)「しんぶん赤旗」
独、原発からの転換模索
再生エネルギーを促進
福島第1原発の事故を受け、ドイツでは“脱原発”の世論と運動が高まっています。その中で、ドイツ政府は「エネルギー政策の転換」を目指し、国民的なコンセンサスをつくろうと模索しています。(片岡正明)
3日に開幕したハノーバーの産業メッセで、メルケル首相が呼び掛けたのは、風力、太陽光・太陽熱、水力などの再生可能エネルギー技術の促進でした。
ドイツは再生可能エネルギーの比重を2020年には総発電量の30%以上、50年には80%をめざす計画を立てています。同首相は原発の代わりに再生可能エネルギーを今まで以上に促進したい意向です。
福島を教訓に
メルケル首相を再考させたきっかけは、福島第1原発の事故です。同首相は事故後、「日本のような高い安全技術を持った国で、起こりえないと思ったことが起きた」と発言。国内にある17基の原発の稼働延長計画を3カ月間凍結し、原発を総点検するよう指示しました。
メルケル首相率いるキリスト教民主同盟出身のレトゲン環境相は、原発稼働延長計画の見直しと再生可能エネルギー増産の加速化を提唱。社会民主党や環境政党の90年連合・緑の党といった野党とも合意できるような「エネルギー転換」の加速化計画をつくりたいとしています。
民主同盟の姉妹政党で、与党の一角を占めるキリスト教社会同盟のゼーダー・バイエルン州環境相は、「社民党と緑の党が連立するバーデン・ビュルテンブルク州とわれわれが与党のバイエルン州のどちらが早く原発から再生可能エネルギーに転換できるか競争だ」と宣言しています。
国民合意形成
これに対し、野党側は、エネルギー政策転換で合意するには「メルケル政権が真剣さを示す必要がある」(90年連合・緑の党のエズデミル代表)と要求。福島原発事故後の地方選挙で躍進している緑の党は、古い原発8基を廃炉にするなどの新しい原発廃棄法案を同党と一緒に起草するようメルケル政権に求めています。
メルケル首相は「原発を今後どの程度稼働させるかは、点検作業が終わった時点での安全性による」という立場です。一方で、「再生可能エネルギーの増産にはそれなりのインフラも必要」とも述べ、再生可能エネルギーが主要な発電源となるまで原発を容認する態度も見せています。
メルケル首相は、原発稼働延長計画の凍結期間が終わる6月までには、各州政府首脳、各党、各社会団体と協議し、エネルギー政策の転換で国民的コンセンサスをつくりたい意向です。
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