2011年4月12日(火)「しんぶん赤旗」

沖縄と福島 「国策」の論理


 「原子力発電は国策であり、首都圏の電力を担ってきたという自負があった」「エネルギー政策は、国防に匹敵する重要問題だ。一地方だけで判断できる問題ではない」(6日、日本記者クラブ)

 福島第1原発が立地する福島県双葉町の井戸川克隆町長の言葉です。同町が原発との“共存”政策を取り、結果として町ぐるみで埼玉県内に避難を余儀なくされたことの是非に対する回答です。

 “国策”の名による強固な圧力や、原発受け入れに伴う補助金や交付金といった懐柔策があり、有無を言わさぬ状況があったことがうかがえます。

 それは町長がいみじくも語った「国防」―日米安保体制の地方への押しつけの構図と驚くほど共通している―。ふだんは外交・安全保障分野を取材している者として、そう感じました。

 在日米軍基地の75%が集中する沖縄県。戦後、米軍に土地を奪われ、故郷はフェンスの中にあり、帰りたくても帰れない県民は少なくありません。収束の見通しがない原発事故で避難を余儀なくされた被災者と共通する苦しみです。

 歴代政府は基地を押し付けるため、基地交付金や平均地価を大きく上回る地代を支払うことで、一部の住民や自治体を抱き込んできました。本土の米軍基地を抱える自治体でも同じです。

国民的議論を

 井戸川町長の言葉からは、「首都圏の電力」のために危険な原発を受け入れてきた、という思いもうかがえます。事実、福島第1、第2原発からの電力はすべて首都圏に供給されています。

 “最大多数の幸福”のために一部を犠牲にするのが「国策」の論理です。従って、「日本のエネルギー政策がどうあるべきなのか。一地方だけではなく、国民的な議論が必要だ」と、井戸川町長は訴えかけます。

 同じ言葉を、沖縄で聞きました。町面積の83%を米軍基地にされている嘉手納町の宮城篤実前町長はこう訴えていました。「沖縄の基地問題を解決するために、日米安保体制の是非に関する国民的な議論が必要だ」

考える時期に

 「国民的な議論」のなかで考える必要があるのは、地方への矛盾のしわ寄せの不当性と同時に、本当に多数の利益になっているのか、ということです。

 福島第1原発の事故は福島県民のみならず、首都圏の農業・漁業や住民の健康にも深刻な被害を与え、国と東京電力に数兆円とも数十兆円とも言われる賠償責任を生じさせました。

 このようなリスクを背負いながら今後も原発依存政策を続けることが正しいのか。そして、世界的な相互依存の高まりの中で、基地周辺住民を爆音や事故の危険にさらしながら、いつまでも軍事同盟にしがみつくことが国益になるのか―。

 地方からの声を受け止め、新しい日本の姿を真剣に考える時期に来ています。 (竹下岳)





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