2011年4月4日(月)「しんぶん赤旗」

被災者の要望 胸に

日本共産党 東日本大震災現地対策本部長
高橋ちづ子衆院議員に聞く


 東日本大震災の発生から3週間余。事態の深刻さが、いっそう浮かび上がってきています。被害の実態と救援・復興の方向について、地震発生直後から現地調査にかけめぐり、被災者の要望に耳を傾けてきた、日本共産党東日本大震災現地対策本部長の高橋ちづ子衆院議員に聞きました。(聞き手 森近茂樹)


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(写真)被災者から要望を聞く高橋ちづ子現地対策本部長(右)=3日、岩手県釜石市

 今回の震災は、犠牲者の数や被害の範囲をみても未曽有の大災害です。津波の現場では、家の土台だけを残し、柱や家財道具、車などが全部いっしょくたになって流され、がれきとなりました。その上に赤い布切れがついたさおが立っている。遺体のみつかった印です。ついさっきまで普通のくらしがあったということを突きつけられます。人命も財産も一瞬で奪われてしまった現場のすさまじさに人生観の変わるような衝撃を受けました。

 日本共産党の東日本大震災現地対策本部は16日に発足して、その日のうちに現地調査を始めました。現地をよく歩いて生の声を聞き、国会と結ぶ役割を果たそうという気持で取り組んでいます。

ライフライン打撃 原発事故が追い打ち

 今回の被害にはいくつかの特徴があります。その一つはライフラインが決定的ダメージを受けたことです。長期にわたって断水や停電が続き、燃料が不足しています。通信手段も絶たれて家族同士の連絡や救援活動が困難な状況になりました。

 行政にも大きなダメージでした。岩手県の陸前高田市は、いまだに四分の一以上の行政職員が行方不明で、大槌町でも町長が犠牲となり多くの職員が行方不明になるなど、行政機能が重大な打撃を受けたところは少なくありません。

 さらに、原発事故が津波被害に追い打ちをかけています。津波被害にあった人たちが、家族を探しにも行けない、という二重三重の苦しみにあっているのです。さらに農産物や水道水、海水の汚染と、それが一気に風評被害につながるなど、これまでにない深刻な状況です。

行政と被災者つなぎ公的支援を手厚く

 しかし被災者は、悲しみをかかえつつも住む場所や仕事など、明日のことを考えています。その要望はときどきに変化しているので、それをつかんだ救援が必要です。

 共産党は、自ら被災している地元議員を先頭に、「被災者のための制度活用の手引」を被災者にお知らせしたり、そこでつかんだ切実な要望を行政に伝え改善を求めるという活動にとりくんでいます。また、救援物資を自宅で避難生活する孤立した被災者にも届けて喜んでもらっています。

 全国からの「なんとかしたい」という思いで寄せていただいた救援募金を、被災した自治体の首長さんらを訪ねて届ける活動もすすめています。その総額は約3億円となります。

 ある避難所では水はあるが食料が無い、別の所では食料はあるが燃料が足りない、などの問題がおきています。他の自治体から行政職員を派遣することもやられていますが、それらを有効に活用するためにも、草の根のネットワークを活用して、行政と被災者をつないでいくことが求められます。

 避難所は、仕切りがあっても寝るときに相手が見えないだけで、起きればお互いにまる見えです。プライバシーを守れる環境にしていきたい。みなさん早く仮設住宅に入りたいと言っています。

 仙台市の高齢者福祉施設でおこなっている福祉避難所では、民医連が物資や人も派遣して、職員ががんばり、家を流された認知症のお年寄りらを支えています。福祉避難所をもっと増やすべきだし、公的な手厚い支援が不可欠です。

原発事故解決むけてすべての知見を

 原発事故の危機収束には時間がかかると思います。避難した住民は、心情的にはすぐにでも戻りたいと思いますが、まずは安全の確保と、そのために避難生活を余儀なくされている方への生活支援です。

 菅首相も「人災」だと認めて志位委員長に福島原発の廃炉と原発増設計画の見直しを約束しました。全ての知見を注ぎ、解決のために全力をあげるべきです。

 その際に危険作業の安全評価を変えることは認められません。また、野菜などの安全基準値を上げてもいいという議論もありますが、国民の命と健康のためにつくった基準ですから守るべきです。残念ながら超えてしまったものについては、全面的に賠償する。東電が責任をきちんと果たすために、国の責任も重大です。

被災者が主人公の復興へともに

 これから、被災地がどう復興していくのかが重要課題になります。そのさいに大前提となるのは、復興に向けて被災者が主人公となって取り組むことです。

 津波がくるから山に近いほうに高層ビルを建てるとか、自治体の合併しかないなどと、被災地の外でさまざまな議論がされています。行政の力が弱まるなど、震災で今までの行革・民営化路線の矛盾が噴出していることこそ、真摯(しんし)に認めるべきです。

 津波被害にあった沿岸地域では、多くの人が水産業に関わり、「浜じゃないと暮らせない」と言っています。そうした気持ちによりそいながら、被災者が主役で、それを支えていくための制度づくりを国会ですすめます。

 そのためには、被災者がものを言える状態にすることが大切です。仮設住宅や公営住宅に入居して、仕事も確保する。みんなが自主的に街づくりをすすめられるように私たちは、大いに提案していきたい。その一環として漁協や商工会議所など、被災地の経済界との対話もすすめています。

 石巻魚市場の須能邦雄社長は、「ゼロから出発せよ、と試練を与えられたのだ」と力強く決意を語ってくれました。悲しみのなかから、復興に向けて歩みはじめたみなさんと、しっかり手を結んで、がんばっていきたいと思います。





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