2011年4月2日(土)「しんぶん赤旗」

主張

原発事故長期化

作業員と住民への対策つくせ


 原子炉を冷却しようと注水すれば放射能で汚染された水が外部に漏れ出す、たまった水を処理しようとしても汚染されたがれきなどが障害になる―東日本大震災で破壊され、最悪の事故を引き起こした東京電力福島第1原子力発電所の復旧作業が難航しています。

 事態は長期化が避けられません。作業にあたる労働者などへの対策とともに、避難生活が続く周辺住民や、放射性物質が飛散する広い範囲の住民への、長期化を前提にした対策が求められます。

深まる「危機の連鎖」

 地震と津波で1〜4号機の炉心を冷やす機能が失われ、その後の爆発で1、3、4号機の建屋などが崩壊した福島第1原発は、放射性物質を含む水や気体が飛び散り、新たな事態が次々発生する、文字通り「危機の連鎖」というべき深刻な状態です。2号機では炉心の燃料棒から溶け出したとみられる高い濃度の放射性物質が流出し、タービン建屋や外部のトレンチ(溝)にまで流れ込み、復旧作業の大きな障害となっています。1、3号機でもタービン建屋やトレンチに汚染水がたまっています。

 東電は、注水などで原子炉を冷やしながら、タービン建屋やトレンチのたまり水の排水を急いでいますが、タンクが満水になっているなど、作業は難航しています。東電は1〜4号機について「廃炉」を表明しましたが、その作業を進めるためにも放射性物質の流出を抑え、原子炉を安定させなければなりません。まさに、ぎりぎりの綱渡り作業です。

 復旧作業が長期化するなかでまず求められるのは作業にあたる人たちの安全です。すでに注水にあたった消防隊員や自衛隊員、建屋内で作業している東電関係者などの被ばくが明らかになりました。政府と東電は作業員の安全確保に最大限の努力が求められます。作業員に線量計がいきわたらないなどというのは論外です。

 避難が求められている周辺住民の困難もいよいよ深刻になっています。すでに原発から20キロ圏内の自治体では町ごとの避難がおこなわれていますが、長期化にともなう住民の生活支援や自治体への援助などが不可欠です。国際原子力機関(IAEA)は、30キロ圏外の福島県飯舘村での土壌汚染を警告しました。住民の不安拡大にこたえ情報を公開するとともに、農家などへの被害補償も急がれます。

 原発から長期にわたって放射性物質が外部に出続けることを前提にした広い範囲の対策も不可欠です。すでに首都圏などで一部の農産物や飲料水の摂取制限などがおこなわれてきましたが、内部被ばくや蓄積される放射性物質への対策がいよいよ大切になります。原発から排水される海中でも、高い濃度の汚染が明らかになりました。政府は「いますぐ」危険はないといい続けるだけでなく、長期になればどんな影響が予想されるのか、情報と対策を示すべきです。

原発政策見直しは急務

 長期化し深刻さの度を増す福島第1原発の重大事故は、震災を軽視し、建設を続けた政府と電力会社の責任を改めて浮き彫りにしています。全国の原発総点検と原発政策の抜本的見直しが必要です。

 日本はもちろん世界でもかつてない事態の収束に国内外の総力を結集するとともに、未曽有の人災から教訓をくみ取るべきです。





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