2011年3月26日(土)「しんぶん赤旗」

電源喪失による最悪事態を警告

福島原発事故でメディア注目

吉井衆院議員 繰り返し追及


 東日本大震災、福島第1原発事故で最悪事態がおきる危機に直面するなか、ネット上で話題となっている日本共産党の吉井英勝衆院議員の原発質問。「東京」24日付の特報企画や、『サンデー毎日』4月3日号などでもとりあげられました。「質問内容を教えてほしい」と赤旗編集局にも問い合わせが相次いでいます。


水素爆発の危険も指摘

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(写真)津波による深刻な原発事故を指摘した吉井議員の質問を大きく報じた「赤旗」(2006年3月2日付)

 「原発8割 冷却不能も」「津波引き波5メートル取水できず 炉心溶融の恐れ」――「赤旗」がこんな見出しで1面トップで報じたのが、2006年3月1日の衆院予算委員会第7分科会の質問です。ネット上でも話題の質問で、吉井氏は大津波と原発事故についてとりあげました。

 今回の大津波は福島第1原発の非常用電源を破壊し、炉心の冷却機能を奪いました。

 この5年前に吉井氏は、津波の“押し波”とともに、“引き波”の影響が大きいと、チリ地震(1960年)の事例をもとに質問しました。

 「(押し波が高ければ)水没に近い状態で原発の機械室の機能が損なわれ」「(引き波が大きければ)原発の冷却機能が失われる」

 吉井氏は深刻な影響について、押し波・引き波、ともに想定せよと迫ったのです。

 津波が東北地方を直撃したチリ地震による“引き波”は三陸海岸で約25分も続き、原発のある宮城県女川町で海水面が推定6メートル低下した記録があると質問で明らかにした吉井氏。「東北電力女川原発の1号機、東電福島第1の1、2、3、4、5号機、この6基では、基準水面から4メートル深さまで下がると冷却水を取水することができない事態が起こりえるのではないか」とただしました。

 原子力安全・保安院は、非常用ポンプ吸い込み水位を下回る海面低下で取水困難になる原子炉は、4メートル低下で28基、5メートル低下で43基もあることを答弁で明らかにしました。

 今回、福島第1原発の原子炉は地震で緊急停止しましたが、送電鉄塔経由でくる外部からの電源が得られなくなった上に、原子炉に付属して置かれた内部電源である非常用ディーゼル発電機が津波で破壊されて、海水を取り込むポンプを動かせなくなり、原子炉の温度が核燃料の崩壊熱で異常に上がり、原子炉建屋が水素爆発で吹っ飛ぶ事態まで引き起こしました。

 津波による炉心冷却機能喪失の危険、水素爆発の事態を予見していた吉井氏。「崩壊熱が除去できなければ、炉心溶融であるとか水蒸気爆発であるとか水素爆発であるとか、要するに、どんな場合にもチェルノブイリ(原発事故)に近いことを想定して対策をきちんととらなければいけない」と政府を追及していたのです。

“安全設計”と保安院強弁

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(写真)使用済み核燃料貯蔵プールを視察する調査団。手前右から吉井英勝、高橋ちづ子両衆院議員=2004年9月6日、青森・六ケ所村

 “大地震・大津波被害と原発”“電源喪失と炉心溶融”“放射性物質と広域被害”。今回の事故で注目されているキーワードです。吉井氏はこれらをとりあげ、最悪の事態を想定して政府に対応を求めていました。

 昨年5月26日の衆院経済産業委員会での質問では過去の事例も示し、巨大地震で原発の外部電源や非常用の内部電源が切断されるため、炉心を水で冷やす機能が働かなくなり、最悪の事態を想定せよと迫ったのです。

 「内外の例から見ると、やはり最悪の事態を想定しなきゃならない。(炉心内の)自然崩壊熱が除去できなくなる。それは炉心溶融にも至りえる大変深刻な事態を考えておかなきゃならない」

 こう述べて、炉心溶融などが起きたときの放射性物質の放出量、その影響・被害調査の実施を提案しました。

 政府答弁は「そういったことはあり得ないだろうというぐらいまでの安全設計をしている」「論理的に考え得る、そういうもの」(寺坂信昭・原子力安全・保安院長)。「想定外」で、現実にはあり得ない頭の中の話という姿勢でした。

 福島第1原発事故で原子力安全・保安院は1号機で「炉心溶融が進んでいる可能性がある」(12日)と初めて現実問題と認めました。原子炉中心部が異常な過熱で破損され、放射性物質の大量放出につながる炉心溶融とみられる重大事態は、2号機、3号機でも進行中です。

 この危機を東日本大震災10カ月前にとりあげた吉井氏は、「頭の体操ではない」と政府を叱りながら“安全神話”に縛られた原発行政の転換を訴えたのです。


原発質問の議事録を見るには

 吉井英勝衆院議員が追及した原発問題の質問は、同氏のホームページで議事録を見ることができます。ホームページのアドレスは次の通りです。

 http://www.441-h.com/message.html


党県委「津波で苛酷事故」 07年

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(写真)日本共産党福島県議団らの東京電力への申し入れ(07年7月)に着目した『女性自身』4月5日号(左)と『ニューズウィーク日本版』3月20日号

 福島原発はチリ級津波が発生した際には機器冷却海水の取水ができなくなり、過酷事故に至る危険がある―2007年7月24日に東京電力に抜本的な対策を迫った申し入れが、いま、商業メディアに注目されています。この申し入れは、日本共産党福島県委員会、党福島県議団、原発の安全性を求める福島県連絡会が行ったものです。

 「『津波発生で苛酷事故に』! 東京電力が握り潰した『欠陥警告』(レポート)」との見出しで報じたのは、女性誌『女性自身』4月5日号。「07年7月、福島県議団らが東京電力に提出した要望書。そこには今回の“悪夢のシナリオ”が予告されていた―」。ここでいう県議団とは、日本共産党福島県議団のこと。同誌は、共産党県議の神山悦子議員を登場させ、当時の要望書の内容を紹介。「福島第一原発の欠陥を、神山議員たちは4年前の時点で、警告していたのだ」「警告を受け止め、真摯に安全対策を講じていれば、惨事は起きていただろうか」と報じています。

 米誌『ニューズウィーク日本版』3月30日号も「福島第一の損傷部分と原発が抱えるリスク」と題する記事のなかで注目したのが、共産党福島県議団らの東京電力への申し入れでした。同誌は「福島原発の津波のリスクは東電が想定していなかっただけで、その危険性は以前から指摘されていた」として、07年7月の党県議団らの申し入れを紹介。「その中では耐震性のほかに『福島原発はチリ級津波が発生した際には、冷却海水の取水ができなくなることが明らかになっている』と早急な津波対策も求めた」として、東電側の対応を問うています。

東電への申し入れから

 日本共産党福島県委員会、党福島県議団、原発の安全性を求める福島県連絡会が2007年7月24日、東京電力の勝俣恒久社長(当時)に行った「福島原発10基の耐震安全性の総点検等を求める申し入れ」のうち、津波についての要求は次のとおり。

 福島原発はチリ級津波が発生した際には機器冷却海水の取水が出来なくなることが、すでに明らかになっている。これは原子炉が停止されても炉心に蓄積された核分裂生成物質による崩壊熱を除去する必要があり、この機器冷却系が働かなければ、最悪の場合、冷却材喪失による苛酷事故に至る危険がある。そのため私たちは、その対策を講じるように求めてきたが、東電はこれを拒否してきた。

 柏崎刈羽原発での深刻な事態から真摯に教訓を引き出し、津波による引き潮時の冷却水取水問題に抜本的対策をとるよう強く求める。





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