2011年3月10日(木)「しんぶん赤旗」

主張

米国務省日本部長発言

歴史ゆがめ侮辱した責任重大


 アメリカ国務省のケビン・メア日本部長が、沖縄の米海兵隊普天間基地の「移設」にからみ、米軍占領下で県民の土地を不当に奪って拡大してきた歴史をゆがめ、基地のない沖縄を願う県民を「ごまかしとゆすりの名人」などと誹謗(ひぼう)・中傷したとされる問題は、国民の激しい怒りを呼んでいます。

 日本の一部である沖縄を長年にわたって支配した、文字通り、「占領者意識」丸出しの発言であり、沖縄県民だけでなく国民全体に向けられたものとして、日本政府の公式の抗議と、米政府の謝罪が強く求められます。

県民の命とくらし脅かす

 メア部長の発言に、沖縄県議会や那覇市議会などが抗議の決議を上げ、謝罪と撤回を求めているのは当然です。しかしことは、沖縄県民の資質を愚弄(ぐろう)したという問題にとどまりません。

 アジア・太平洋戦争の末期、地上戦の戦場となった沖縄は、日本軍が敗れたあと米軍に占領され、米軍は住民を収容所などに閉じ込めている間に土地を奪い、巨大な基地を次々と建設しました。占領下の土地強奪を禁止した、戦時国際法にも違反する暴挙です。メア部長がいうように、「もともと水田の中に作られ」たのに「(都市化と人口増で)町が基地を取り囲んだ」ものでは決してありません。

 その後も沖縄の基地は米軍が「銃剣とブルドーザー」で脅して拡張され、沖縄は日本がサンフランシスコ条約で講和したあとも1972年に返還されるまで米国の支配下に置かれてきました。沖縄の米軍基地には核兵器が配備され、ベトナムなどへの侵略の拠点とされてきたこともよく知られています。メア部長は「地域の安全保障のため」といいますが、県民のくらしを脅かし、アジアの平和さえ破壊してきたのは明らかです。

 沖縄県民は米軍基地の拡張に反対し長年にわたって撤去を要求し続けてきました。日米両政府でさえ危険を認めている米軍普天間基地を「特別危険ではない」といいはるメア部長の発言は、米軍基地によって日夜生命を脅かされている県民の願いを敵視し、基地被害を甘受せよと迫るものです。

 メア部長が普天間基地の「移設」に関連し日本政府は沖縄県知事に、「金がほしいなら、サインしろ」というべきだと“指図”しているのはきわめて重大です。沖縄を買収すればいいというに等しい、県民をバカにした発言です。基地のたらいまわしでは、県民の命とくらしは保障されません。だいたい、日本政府に沖縄県との交渉の仕方を指示するなど内政干渉そのものであり、絶対に許されることではありません。

「占領者意識」そのもの

 まさに沖縄の米軍基地の歴史を偽造し、県民を侮辱する発言です。かつて沖縄を占領し傍若無人にふるまってきた「占領者」の意識そのままです。日本の異常な対米従属の仕組みは戦後の占領期にその根っこが形作られました。沖縄と日本に干渉するメア部長の発言が映し出すのは、占領期以来の支配従属関係そのものです。

 メア氏が、対日外交をつかさどる日本部長の重職にあること自体重大です。日本政府の形だけの「遺憾」表明や、米側の「個人的」な謝罪にとどめず、日本政府は米政府に公式に抗議し、沖縄県民と国民への謝罪を求めるべきです。





■関連キーワード

もどる
日本共産党ホーム「しんぶん赤旗」ご利用にあたって
(c)日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 TEL 03-3403-6111  FAX 03-5474-8358 Mail info@jcp.or.jp