2011年3月3日(木)「しんぶん赤旗」

民医連調査 死亡事例 患者の実態

しこり・呼吸困難も受診がまん

重すぎる国保料・医療費


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(写真)深刻な手遅れ死亡事例について報告する民医連の長瀬文雄事務局長(中)。右は湯浅健夫事務局次長=2日、東京都文京区

 全日本民主医療機関連合会(全日本民医連)が2日に発表した死亡事例からは、国民健康保険料(税)、医療費の窓口負担が重くのしかかり、重篤に陥るまで医療にかかれない患者の実態が明らかとなりました。

 糖尿病性意識障害と診断された32歳の男性(東京都)は、緊急入院後10日で亡くなりました。入院する2、3カ月前から口の渇きや多飲、多尿、嘔吐(おうと)がひどく食べ物がのどを通らない状態でした。男性は、重症のぜんそくのため高校を中退。定職につけず、アルバイトや日雇いで収入を得ていました。受診時は無保険状態。これまで一度も保険証を取得したことがないようでした。

滞納納付迫られ

 国民健康保険証交付と引き換えに、保険料の滞納一括納付を求められる事例が複数ありました。保険料が支払えなくなり無保険状態だった女性(59)は、水がたまりふくらんだおなかを抱えて川崎市の役所へ相談。「保険料を支払わないと保険証は渡せない」といわれ、「死ねということか」と訴えて有効期間2週間余りの「国民健康保険被保険者受療証」を交付されました。受診後即入院しましたが、末期の肝がんで数カ月後に死亡しました。

 胃がんで亡くなった北海道の男性(44)は、自営業でした。収入が不安定で保険料を支払えず資格証明書を渡されていました。資格証明書では、受診した医療機関の窓口でいったん10割支払う必要があります。

 男性は亡くなる半年ほど前から腹痛や体重減などの症状が。1カ月前からは呼吸困難、嘔吐などの症状も出ていましたが、仕事を休めば収入が減るため受診を我慢していました。症状に耐えられず無料低額診療制度の手続きを経てようやく入院。1カ月足らずで死亡しました。

治療を拒否して

 正規の国保証を持ちながらも、高額な医療費負担に耐えられず治療を拒否し、亡くなる実態も浮かび上がりました。秋田県の女性(58)は建築関係の日雇いの仕事をする夫と2人暮らしでした。数年前から左下腹部にしこりなどの症状がありましたが、様子をみていました。受診を勧められるも拒否。数カ月後直腸がんなど手術を受けたものの肝臓へがんが転移し、亡くなりました。

 後期高齢者医療制度対象者の事例も3例ありました。大阪府の男性(84)は、保険料はきちんと支払う一方で、1割の医療費窓口負担が重く「医療費が支払えない」とぎりぎりまで我慢。受診時はすでに末期の胃がんで間もなく死亡しました。





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