2011年3月2日(水)「しんぶん赤旗」

文化行政第3次基本方針 閣議決定

自公同様 予算拡充に背

辻 慎一


 菅内閣が2月に閣議決定した、「文化芸術の振興に関する基本的な方針」(第3次基本方針)は、文化芸術振興基本法にもとづいた国の文化行政の基本方針で、民主党政権では初めての策定となります。

 「基本方針」は、「文化芸術振興の基本理念」「文化芸術振興に関する重点施策」「文化芸術振興に関する基本的な施策」の三つの柱となっています。「重点施策」では、「効果的な支援」「人材の充実」「子どもや若者を対象とした文化芸術振興策の充実」などの6点を掲げました。

路線転換なし

 自公政権時代の「第2次基本方針」は、5年を見通したものとして2007年2月に策定されました。民主党政権は、1年前倒しで「第3次基本方針」を策定しましたが、内容の面で自公政権下の方針からの転換はみられません。

 もともと自公政権の「第2次基本方針」は、「規制緩和などにより新たな分野への民間の進出が可能となり、多様なサービスが効率的に提供される」と「構造改革路線」を賛美し、国の役割については「厳しい財政事情の下で適切な評価を行い、支援の重点化、効率化を図る」として、文化予算の支出を抑制するものでした。実際、自公政権は、芸術団体への助成を削減しました。

 「第3次基本方針」には一方で、「『ハード』の整備から『ソフト』と『ヒューマン』へ」など、民主党が政権公約で掲げてきた文言や、芸術への公的支援を「新たな成長分野として潜在力を喚起する」など、菅内閣の「新成長戦略」にそった文言ももりこまれています。

 しかし、肝心要の文化予算の問題では、「厳しい財政事情にも照らして支援の重点化、効率化」を図るとしており、「第2次基本方針」とほぼ同じ文言を踏襲しています。昨年、芸団協が文化予算の抜本増額を求めて署名を広げたように、フランスや韓国に比べ、7分の1しかない文化予算では、まともな文化行政を推進することはできません。「第3次基本方針」のもととなった文化審議会文化政策部会の審議の過程では、「諸外国と比較して極めて貧弱な文化予算を大幅に拡充」することを求めていました。しかし、「第3次基本方針」には、こうした当たり前の要求は盛り込まれませんでした。

地位向上削除

 さらに、「第3次基本方針」の基本理念からは、「第2次基本方針」では、重点課題をすすめるうえでの「配慮事項」として掲げられていた「芸術家等の地位向上のための条件整備」などの課題が抜け落ちています。今日の芸術家をとりまく実情から、芸術家の地位向上をはかることはより積極的に位置づけられるべき課題です。この点では民主党政権の方針は「第2次基本方針」よりも後退したと言わざるをえません。

 「第3次基本方針」の重点施策のなかでは、支援のあり方にかかわって、長年、芸術団体と日本共産党が指摘してきた「実質的に赤字の一部を補(ほ)填(てん)する仕組みとなっている」問題点を認め、助成方法の改善を掲げました。すでに来年度予算案で助成方法の変更がうたわれていますが、政府として公式文書で初めて記述したものになります。支援の抜本拡充とあわせ、実際に役立つものにするための努力が必要です。  (つじ・しんいち 党学術・文化委員会事務局次長)





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