2011年2月12日(土)「しんぶん赤旗」

エジプト変えた反政府デモ

政治・社会の民主化へ


 【カイロ=伴安弘】エジプトの反政府デモは当初、政府の弾圧を受けたものの、開始から2週間を超え、同国の政治・社会を民主化する方向へ動かしつつあり、同国に大きな変化をもたらしています。


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(写真)カイロ中心のタハリール広場。軍の戦車のそばで前夜から泊まり込んだデモ参加者=7日(伴安弘撮影)

 スレイマン副大統領は6日、デモ側の一部との対話で一連の譲歩策を示し、デモや報道の自由を保障すると約束。警官隊の姿もなく、軍の規制も受けない、平和的なデモが行われるようになりました。これはエジプト史上初めてのことです。

 表現・報道の自由にも大きな変化が見られます。野党系の新聞だけでなく、政府系の新聞も前内閣の不正・腐敗の実態や反政府側の人々の声を報道するようになっています。

 国営テレビも当初は反政府デモを報道せず、3日には女性記者が抗議して辞任するという事件もありました。しかし7日には、治安当局に12日間拘束されていた反政府デモの呼びかけ人の一人へのインタビューを放映するまでに変わりました。

 警官が街から消えたため、一般住民は自警団を組織しましたが、この中でイスラム教徒とキリスト教徒(コプト教徒)との連帯も生まれています。

 ムバラク大統領も息子のガマル氏も9月の大統領選に立候補しないことはすでに確認されています。国民から不正・腐敗を糾弾されてきた前内閣の閣僚と与党国民民主党指導部も辞任を余儀なくされました。

移譲へ行程表

 スレイマン氏は8日午前のテレビ演説で「国民対話」を受け入れたと表明。憲法改正準備委員会の設置など「平和的・組織的権力移譲」へのロードマップ(行程表)や、デモ襲撃事件(2〜3日)の調査委員会の設置を公式に明らかにしました。この方針の下で、9日に「政治囚」の釈放も始まりました。

意見の対立も

 政府と反政府デモ側は、野党の候補を締め出し大統領の事実上の終身制を規定している現憲法を改正することで一致しています。しかし、真に民主的な政権をいかに実現するかをめぐって、意見の対立が起きています。

 反政府デモ側は一致して「ムバラク即時辞任」を主張。国会を解散し、民主的に選出された新しい国会の下で憲法を改正すべきだと主張する声も出ています。一方、政府側はムバラク氏の即時辞任を拒否し、現行憲法下での「平和的権力移譲」を主張。議会の解散には応じない構えです。

 デモ側とは距離を置く「賢人会議」(識者・法律家で構成)のメンバーでノーベル物理学賞受賞者のアハメド・ズウェイル氏は9日、▽憲法改正に向けた専門家機関の設置▽非常事態令の撤廃と政党と政治的権利に関する法律の改正▽議会の解散と自由な選挙の実施―など5項目を提案。デモ側との一致点をみせました。

 デモ側は、ムバラク氏辞任の前でも政府との対話を受け入れようとする勢力と、辞任なしでは対話を拒否するとする勢力が交じっています。今後のデモと「国民対話」の行方が、政治動向を左右することになりそうです。





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