2011年2月7日(月)「しんぶん赤旗」

老齢加算廃止先行は不本意

基準是正せず「つまみ食い」

政府専門委の元委員長意見書


 生活保護で廃止された老齢加算の復活を求めた生存権裁判の中で提出された、ある意見書がいま、注目されています。老齢加算廃止を提言したとされる国の「生活保護制度の在り方に関する専門委員会」で委員長を務めた岩田正美日本女子大学教授の意見書です。老齢加算が廃止された経過について「不本意」と述べています。


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(写真)老齢加算の復活を訴える生存権裁判の東京訴訟原告と支援者=1月27日、厚労省前

 意見書は2009年5月に東京高裁に提出されたものです。その中で岩田氏は、老齢加算の廃止は保護基準の是正と「セットで提案したもの」と主張。政府が加算廃止を「つまみ食い的に先行させ」「是正等はいまだに提案されていない」ことに、「委員長の立場として、はなはだ不本意といわざるをえない」と述べています。

 東京高裁は10年5月、意見書の内容を採用することなく、原告敗訴としました。一方、原告勝訴とした同年6月の福岡高裁判決の論旨は、岩田氏の主張と似ています。国が保護基準を是正するなど代替措置を検討も実施もせず、老齢加算を廃止したことを、違法としました。

 現在、東京、福岡の訴訟は最高裁でそれぞれ審理されています。専門委員会の提言を国がどう扱ったのか、それを裁判所が正しく認識し判断する上で岩田元委員長の意見の扱いが注目されています。

代替措置求める

 専門委員会は03年8月に設置されました。意見書によると、専門委員会は生活保護基準について20年ぶりに「本格的な検証作業を委ねられ」「(生活保護)制度全体の見直しもその課題として掲げていた」といいます。大きな任務を課せられたにもかかわらず、「加算問題の処理がまず求められ」ました。

 専門委員会は同年12月、「加算そのものについては廃止の方向で見直すべき」とする中間報告を提出。さっそく翌年度には同加算が減額されました。

 岩田氏は意見書の中で、「委員会の審議途中における老齢加算の先行的廃止は、中間報告の一部のみを委員会の結論として即座に利用」したとして、政府の対応に不満を表明しています。

 中間報告は、「廃止の方向で見直す」ことに、条件をつけました。それは、生活保護基準の体系を是正して、憲法25条がいう最低生活を維持できるような代替措置を検討することでした。代替措置は単身世帯の基準を創設するなど、現行基準の矛盾をただすはずでした。

 岩田氏は意見書で、老齢加算の廃止は、基準体系の是正と「セットで提案したもの」と主張。廃止だけを先行した政府のやり方を批判しています。

 岩田氏は本紙の問い合わせに対して「責任ある立場だったので、取材は断っています。意見書をよく読んでほしい」と述べました。





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