2011年2月7日(月)「しんぶん赤旗」
エジプト混迷
改革へ前進も 中心勢力不在
【カイロ=伴安弘】1月25日に始まった反政府デモは30年間政権に就いてきたムバラク政権を激しく揺さぶり、国民の政治的自由拡大に向けたエネルギーが噴出しています。ムバラク氏は、一定の譲歩を余儀なくされていますが、即時辞任は拒否しています。
ムバラク大統領は「100万人デモ」と銘打たれた2月1日のデモの直後の同日深夜、国営テレビで演説。(1)9月の次期大統領選挙に出馬しないが、それまでは任期を全うする(2)与党に有利な大統領選挙制度を変えるための憲法改正や政治、社会、経済改革を進める(3)警察や司法当局に権利や自由の尊重と不正・腐敗の追及を指示する―などを表明しました。そして「平和的な権限移譲」のためだとして、即時辞任を拒否しました。
これらの諸点は反政府デモ参加者が求めてきたもので、エジプトの民主的改革への大きな前進の可能性を示すものでした。
世論割れる
しかし、この大統領演説を受け入れるのか、ムバラク氏の即時辞任を要求するのかで、世論は分かれました。
デモを繰り返すよりも、事態の正常化を優先すべきだという声も多く聞かれます。エジプトでは1600万人が日雇いで生活し、観光業が重要産業です。経済がストップしている状況はこうした人々の生活に深刻な影響を与えています。
さらに秘密警察などの関与が指摘されている略奪、放火が人々の不安を高めています。住民は自警団を組織し、現在も徹夜で地域の警戒に当たり、疲れもみせています。
こうした中、2日から3日にかけてタハリール広場のデモ参加者を「大統領支持派」が襲った事件(11人死亡)は、ムバラク即時辞任要求を一気に高めました。この事件は国民民主党が組織したとみられています。
4日には再び大規模な反政府デモが行われました。「辞職の金曜日」と銘打たれたこのデモには、カイロだけで100万〜150万人が参加したといわれます。
「自由保障」
一方、新たに就任したスレイマン副大統領とシャフィク首相は、大統領演説に沿って前内閣の閣僚などの不正・腐敗摘発を始め、デモへの襲撃事件の再発防止とデモを行う自由を保障するとしています。
反政府勢力にとっていま問題となっているのは、デモ参加者をまとめる中心勢力が形成されていないことです。
ムスリム同胞団は当初、デモを支持しつつも参加はせず、その後、デモが拡大する中で参加するようになりました。エルバラダイ前国際原子力機関(IAEA)事務局長は国際的には著名でも、「外国にいた人」として国民の多くは支持していないといわれます。
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