2011年2月3日(木)「しんぶん赤旗」

新燃岳噴火1週間 都城ルポ

灰とたたかう

「家の前手付かず」 総出で奮闘の農協 校庭使えぬ小学校


 宮崎、鹿児島県境の霧島連山・新燃(しんもえ)岳の噴火が活発化してから2日で1週間になりました。1日、2日と爆発的噴火が続き、入山規制も火口周辺3キロ圏内から4キロ圏内に拡大されました。降灰が続く宮崎県都城市北部の住民の姿を追いました。(柴田善太)


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(写真)灰が次つぎと運び込まれる都城市の灰集積場=1日、宮崎県都城市

 山のように積まれた灰のすそに、また灰が積まれていきます。1日に都城市が設置した降灰集積場には大型トラックから乗用車まで、ひっきりなしに横付けし、灰を降ろします。

 軽トラックの男性(67)はシャベルで灰を降ろす手を休めず、「これできょう3回目。まだ始まったばかりだ。あと7回分くらいある」と息をきらしながら言いました。

 2日から市による家庭の灰の収集が始まりましたが不燃ごみの日の週1回だけです。車でごみステーションに25袋の灰を運んできた女性(63)は「庭の分は済んだけど、家の前の道は手付かずです。週1回では間に合わない。特別体制をとってほしい」と話しました。

ゴボウ育つか

 都城は農業が主力産業です。

 山田町の男性(70)と妻(75)は1ヘクタールの畑でゴボウとホウレンソウを栽培しています。今月中旬収穫予定だったホウレンソウは灰にまみれ変色、茎が折れたものもあります。ゴボウは霜よけの布の上の灰を取り除きましたが、降灰が続く中で育つかどうか心配な状態。予定していた200万円ほどの収入も困難です。

 「少なくても収入があれば回しようがあるが、これでは回しようがない。あきらめて他の作物に変えるにしても、今の時期は植えるものがない」

 新燃岳から約9キロの御池町で130頭の牛を肥育する男性(66)と妻(61)の牛舎は10センチ積もった灰の重みで屋根の一部が崩れた状態です。「他の場所は農協の人が来て灰下ろしをしてくれたから助かった」

 JA都城の新森雄吾組合長は「1日70人くらいの職員が農家の応援に出ています。いまは人海戦術でやるしかない。あとは噴火の終息を願うばかりです」と言います。

ストレス心配

 小中学校の休校もなくなり、1日から通常授業に戻りました。

 しかし校庭は灰に覆われたまま。体育の授業は体育館でするしかありません。教室の換気も風のないときに最小限窓を開けるだけです。

 山田小学校の今別府平和校長は「家庭でも学校でも外で遊べん。今は最初だからまだいいが、これが長引けば子どものストレスになる」と心配します。

 同校では子どもの安全確保のため通学は保護者が車で行うようにしています。条件のない家庭は近所の親が手助けしています。

 夏尾町で一人暮らしの女性(74)が「あっ、また煙だ」と新燃岳の方を指さしました。

 1月26日に飛んで来た5センチ角の噴石を見せてもらっていた時のことです。

 「あん時は雨戸に石があたってガンガン鳴って怖くて眠れんかった。またあんなことにならんければいいが」

 女性は自動車の運転ができません。灰を入れた袋は重く、ごみステーションに運べず自宅の入り口に置くのが精いっぱいです。

 1月26、27日だけで噴石、降灰は約7000万トン。

 灰とのたたかいは始まったばかりです。





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