2011年1月26日(水)「しんぶん赤旗」

薬害イレッサ

「所見」の趣旨ゆがめる国・企業

被害者の立場に立て


 「副作用の少ない夢の新薬」と大々的に宣伝して世界に先駆けて販売した抗がん剤の「イレッサ」。公表されているだけで819人が副作用の間質性肺炎で亡くなっています。

 これだけの多数の死亡者を出した薬害事件に対して、国立がん研究センターの嘉山孝正理事長は「イレッサは、薬害ではなく副作用の問題で、副作用の責任を問えば、医療は成り立たなくなる」と述べました。

 どれだけの患者の命が奪われれば「医療が成り立つ」のでしょうか。がん患者の命の重さを問う薬害イレッサ訴訟に対する敵意をむき出しにしたコメントです。

 「和解を受け入れれば、今後の(新薬の)承認体制に大きな影響がある」という厚生労働省幹部。企業も、官僚も、専門医もセンセーショナルな言葉を使い患者らをどう喝し不安をあおっています。

 裁判所が示した和解所見は、添付文書に副作用による死亡のおそれなど重要と考えられる事項については前の方に配列すること、結果の重大性やその予見を含めて正しく評価することができること、具体的に記載することを求めたもので、「審査を厳しくせよ」とか「承認を遅らせる」ように求めているものではありません。「平均的な医師を対象として、該当医薬品を安全かつ適正に使用するために必要かつ十分な情報を提供する必要がある」(大阪地裁所見)と指摘しているのです。

 企業も、官僚も、専門医も「所見」の趣旨をゆがめて、的外れな見解を発表しています。

 弁護団が裁判所に提出した資料によれば薬害イレッサ訴訟で被告企業側の証人に立った専門医は、被告企業から講演料やコーディネーター料の名目で多額の報酬を受け取っています。

 所見を読まずに「報道」だけで見解を発表した専門医もいます。

 企業、官僚、専門医が患者被害者の立場に立ち、問題の解決を図ることが強く求められています。 (菅野尚夫)





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