2011年1月23日(日)「しんぶん赤旗」

主張

菅首相外交演説

米追随脱却でこそ役割示せる


 菅直人首相が20日行った外交演説は、「歴史の分水嶺(れい)に立つ日本外交」といいながら、いの一番に「日米同盟が基軸」だと、これまでの対米追随の路線を一歩も出るものではありませんでした。

 首相が通常国会での施政方針演説を前に、こうした演説をするのは極めて異例です。民主党政権が「外交力」を発揮していないと批判されていることがよっぽどこたえているのでしょうが、日米軍事同盟を中心にした対米追随外交を改めない限り、アジアと世界で積極的な役割を果たすことはできません。外交を語るなら、対米追随からの脱却こそが求められます。

世界の変化見えていない

 菅首相は演説の冒頭、今日の世界は「歴史の分水嶺」ともいえる時代にあると、中国やインドなどの新興国が台頭し、経済活動など国境を超えた活動が広がっていることを指摘しました。しかし、そうした世界の構造変化が本当に見えているなら、日本外交の第一の柱として、「日米同盟」「日米基軸」を持ち出すというのは、まったく陳腐です。世界がどんなに変わっても、アメリカとの同盟関係さえ維持していればいいというのでは、外交に求められる構想力も対応力も発揮できません。

 だいたい、かつて日本の外務省が“米国務省日本出張所”とやゆされ、国際舞台での日本の行動がアメリカの“投票機械”とまでいわれたのは、外交面でもアメリカいいなりで、存在感を示してこなかったからです。菅首相は、日米同盟は「政権交代にかかわらず、変わりなく維持強化されるべき関係」といいますが、民主党政権になっても対米追随の姿勢を変えていないことが政治を停滞させ、国民に失望と怒りをもたらしていることも明白です。

 菅首相は演説で、日米同盟を「深化」させるために沖縄県民が島をあげて反対している米海兵隊普天間基地の県内「移設」を実行していくことや、日本の農業を破壊する環太平洋連携協定(TPP)への参加を目指していくことを確認しました。これこそ、アメリカいいなりの政治が国民を苦しめる元凶であり、対米追随から脱却してこそ、国民の利益が守られることを示すものです。

 菅首相は日米同盟を、アジア太平洋地域の「安定要素」、「公共財」といいはりました。しかし、最近の北朝鮮や中国など北東アジアの情勢を見ても、日米同盟の強化は、安定をもたらすどころか地域の緊張を逆に激化させかねません。

 とりわけ外交演説と銘打ちながら首相が「安全保障環境への的確な対応」を柱に持ち出し、「防衛計画の大綱」にもとづく日本の軍事力の強化を強調したのは重大です。もめごとを戦争ではなく話し合いで解決してこそ外交です。軍事力を背景に要求を押し通すなどといういわゆる“砲艦外交”は、本来外交の名に値しません。

自主自立外交求められる

 今日の国際社会で、外交の役割がきわめて重要になっているのは明らかです。そうした中で日本も役割を発揮しようと考えるなら、日米同盟にしがみつくのではなく、アメリカにもののいえない対米追随外交を脱却し、自主自立の平和外交に転換することです。

 日米間でも時代遅れになった軍事同盟を解消し、対等・平等・友好の関係を結ぶことこそ課題です。





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