2011年1月21日(金)「しんぶん赤旗」

主張

「税と社会保障」

財源は消費税増税に頼らずに


 民主党政権は6月までに「税と社会保障の一体改革」の政府案をまとめることを確認しました。

 取りまとめを担当する与謝野馨経済財政相が20日付の各紙インタビューで、政府案には消費税の増税幅も明記したいと語りました。税率は少なくとも10%に上げるべきだというのが同氏の持論です。

やはり口実にすぎない

 菅直人首相は「税と社会保障の一体改革」について、消費税引き上げのための議論ではなく社会保障を維持していくための財源の議論だと説明しています。

 しかし現実に民主党政権が進めているのは、後期高齢者医療制度では差別医療の仕組みを温存し、国民健康保険でも国民の負担を増やす制度改悪です。自公政権の社会保障費削減による傷口を治すという国民への公約を踏みにじって、傷口を広げていく政策です。

 小泉内閣で経済財政相を務めた与謝野氏を「税と社会保障の一体改革」の取りまとめ役として閣僚に迎えたことは、民主党政権の裏切りを象徴しています。与謝野氏は当時、経済財政諮問会議の担当大臣として、社会保障費の自然増を毎年2200億円削減するとともに消費税増税をめざす「骨太方針」をつくった中心です。

 首相は消費税の国税分が7兆円で高齢者医療・介護・年金の予算は17兆円だから、差額の「10兆円」は借金で穴埋めしているとのべています。その「10兆円」をどうするのか、と国民に迫って消費税増税を認めさせようというのです。この議論は日本の財政のあり方と実際の消費税の使い道の両面で、まったくの作り話です。

 毎年の予算書には消費税を高齢者の医療・介護・年金に使うと書いてありますが、消費税だけでこれらの予算を賄うという意味ではないことは明らかです。財政は、何より憲法が定めた国民の権利を保障するための制度です。社会保障は国民の生存権を保障するための仕組みであり、所得税も法人税も優先して充てられるべき分野です。消費税で足りない分は、すべて借金で穴埋めしているというのは何重ものでたらめです。

 現実には社会保障は改悪に次ぐ改悪で、国民の生存権を脅かしてきました。さらに、消費税で入ってきた税収と法人課税の減収が累計でほぼ一致しており、消費税の税収が大企業向けの減税に回ったに等しい収支になっています。“消費税は社会保障に使っています”などとは、とても恥ずかしくて言えない実態です。

 しかも、差額の「10兆円」を埋めるために消費税率を引き上げるというなら、ほとんど社会保障の充実に回るお金は残りません。おまけに1・5兆円の法人減税となれば、消費税率引き上げで増える税収は砂にしみこむように消えていくだけです。どうみても社会保障は口実にすぎません。

応能原則に立ち返って

 年収200万円以下の給与所得者が4分の1を占めるほど貧困が広がっている日本で、所得が低いほど負担が重い消費税の増税はあまりにも非現実的です。いまこそ税制は負担能力に応じた応能負担の原則に立ち返るときです。

 社会保障を削減から拡充に転換し、軍事費を削減するとともに自公政権時代の大企業・大資産家への行き過ぎた減税を正す財政・税制の抜本改革が求められます。





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