2011年1月14日(金)「しんぶん赤旗」

日米防衛相会談

「辺野古」「同盟深化」並行で

武器輸出 欧州視野に風穴


 「共通戦略目標の更新と普天間移設は別の問題だ」。13日に行われた北沢俊美防衛相との会談後の共同記者会見で、ゲーツ米国防長官は12日の北京での会見に続いてこう強調しました。

 今春の菅直人首相訪米時に発表する日米「共同ビジョン」では、「対テロ」を主軸とした2005年2月の「共通戦略目標」をあらため、中国や北朝鮮など北東アジア情勢に重点を移す構想です。今回の会談でも、「大半は極東情勢に費やした」(防衛省首脳)といいます。

 ゲーツ長官の発言から、米側が日米同盟「深化」を円滑に進めるため、米海兵隊普天間基地(沖縄県宜野湾市)の同県名護市辺野古への「移設」を“先送り”するとの見方が相次いでいます。

 しかし、そう単純ではありません。

 ゲーツ氏は前原誠司外相との会談では、沖縄の「基地負担軽減」について「普天間代替施設の問題の進展に従って実施していきたい」と述べています。

 これは、2009年10月にゲーツ氏が来日した際の「辺野古(移転)がなければ土地を返さない」という“どう喝”発言と趣旨は同じです。北沢防衛相との会談でも、辺野古新基地建設に合意した06年の「在日米軍再編」のロードマップについて「非常に重要だ。沖縄にとっても利点がある」と、ロードマップの履行を迫っています。

 今回のゲーツ氏の来日は、普天間基地「移設」問題についての関係閣僚への“念押し”と言えるでしょう。

負担軽減の欺瞞

 防衛省首脳は、「それ(辺野古移設)をやらなければオールオアナッシングかというと、そういう厳格な定義ではない」と弁明。沖縄向けには、「負担軽減」を優先させる姿勢を示しています。

 その中の「目玉」として米軍嘉手納基地(沖縄県嘉手納町など)所属のF15戦闘機のグアムへの一部訓練移転の協議を推進することが合意されました。

 しかし、訓練移転の拡大が「基地負担の軽減」とは無縁であることは、これまでの実態から見て明らかです。

 06年の「在日米軍再編」で、嘉手納基地の「負担軽減」として同基地所属のF15戦闘機の本土への訓練移転を合意。しかし訓練移転前をはるかに上回る外来機が飛来し、嘉手納町の09年度の測定では、環境基準値を超える爆音が過去最悪になりました。

 グアムへの訓練移転費では、米軍「思いやり予算」の特別協定の改定が想定されています。日米地位協定上も支払う義務のない「思いやり予算」を海外の米軍基地にも広げるもので、際限のない負担に道を開く動きとして重大です。

三原則見直しへ

 北沢防衛相は共同会見で、日米で共同開発中の迎撃ミサイル(SM3ブロックIIA)の第三国移転をゲーツ氏から求められたことについて、「本年中を目途に結論を出す」と述べました。

 内部告発サイト「ウィキリークス」が昨年11月28日付で暴露した公電は、SM3ブロックIIAの欧州移転を協議していることを示しています。

 憲法の平和原則に基づいて事実上、武器輸出を全面禁止する「武器輸出三原則」については、これまでも自公政権下でミサイル防衛の日米共同開発などが例外とし、抜け穴がつくられてきました。第三国移転の要求は、さらに抜け穴を拡大させ、三原則見直しにつなげるものです。 (洞口昇幸)


訓練移転 負担軽減にならず

 田仲康栄・嘉手納町議会基地対策特別委員長(日本共産党)の話 F15戦闘機のグアムへの訓練移転は、まったく負担軽減になりません。現在、1回あたり5機程度という小規模で本土自衛隊基地への訓練移転を行っていますが、外来機の増加で騒音は逆に増えています。仮にグアムへ大規模移転したとしても、嘉手納を拠点とすることに変わりはありません。外来機の飛来規制や嘉手納所属機の削減・撤去をしない限り、何も実態は変わらないでしょう。





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