2011年1月7日(金)「しんぶん赤旗」

これでは“最大不幸社会”

菅首相発言でみえたのは


 消費税の増税、環太平洋連携協定(TPP)の参加、国会議員の定数削減…。5日のテレビ朝日系番組で菅直人首相が表明したのは、国民の暮らしと日本経済を壊し、国民の声を切り捨てるものでした。年頭会見(4日)で「最小不幸社会を目指す」などと述べた菅首相ですが、もたらされるのは“最大不幸社会”です。

消費税増税

法人税減税とセット

 菅直人首相は、年間の消費税収が約7兆円に対し、社会保障費は17兆円必要で10兆円足りないとして、消費税増税を正当化しました。

 しかし、社会保障費は税と保険料などを含めた国の財政全体で支えるべきものであり、事実、消費税だけで支えているなどというのはデタラメです。社会保障財源を消費税に限るという考えは、際限のない増税か社会保障の切り捨てという最悪の二者択一を迫るものです。

 これまでも社会保障を口実に消費税の増税は行われてきましたが、法人税減税の穴埋めにつかわれてきたのが実態です。消費税導入後22年間で224兆円の税収に対し、法人税は208兆円の減税が行われています。消費税導入と税率引き上げの後も、医療、介護、年金などはよくなるどころか、改悪され続けてきました。

 大企業の「カネ余り」が指摘されながら菅首相は昨年末、法人税の実効税率5%引き下げを、財源を確保しないまま決定しました。今回の消費税増税に向けた動きは法人税引き下げとセットであることを示しています。

比例定数削減

国民の声届きにくく

 「基本的な考え方はいまもまったく変わっていない」。首相は、昨年の民主党参院選マニフェストで掲げ、具体化を指示した衆院比例定数80削減、参院40削減についてこう述べました。

 国民に消費税増税などを迫るために「まず、政治家自らが身を削る」(マニフェスト)との理屈ですが、民意を正確に反映する比例の定数が削られ、小選挙区の比重が高まれば、消費税増税反対などの国民の声が国会に届かなくなります。

 首相は番組で、もともと必要な参院の「1票の格差」是正と、民意を削る比例削減を同列に並べて「両方が実現できるような議論を政党間でやることがふさわしい。党としてもしっかり取り組むよう指示した」と発言しました。

 民意の正確な反映という基準に照らせば、「1票の格差」是正は当然です。しかし、比例削減はそれに真っ向から反します。

TPP参加問題

輸出企業の利益優先

 菅首相は環太平洋連携協定(TPP)について、「参加するのに必要な農業に対する対策とか、そういうものを検討している」と述べ、加盟の意向を表明しました。

 しかし、菅首相が挙げた「対策」は、「加工して消費者にまで届ける」などすでに行われていることや、農地売買の「規制緩和」など、農産物大量輸入で疲弊している日本農業の再生策にも程遠いものでした。

 TPP加盟などで関税が撤廃されれば、食料自給率は13%に激減(農林水産省試算)します。ところが菅氏は、食料自給率を50%に引き上げる政府方針実現の有効な対策はなんら示しませんでした。

 労働力や金融など各種サービスの輸入も原則自由化するTPPは、日本社会を土台から破壊しかねず、国民が願う自給率向上のための「食料主権」の確保など自主的な経済社会の確立よりも、関税撤廃で大もうけする輸出大企業の利益を優先させる姿勢です。

 菅氏が日本経団連など財界3団体の新年祝賀パーティー(5日)で、「いま日本が明治から戦後に続く『開国』が必要だともっとも実感しているのがみなさん方だ」と述べたとおりです。

公務員人件費

民間よりもっと削減

 「直接交渉で(公務員の)賃金を決められる法案を出したい」。首相はこう述べて、悪政を押し付ける“露払い役”としての公務員の人件費削減に対する覚悟をにじませました。

 国家公務員から不当に剥奪した労働基本権の一部を回復する代わりに、人件費削減をのむよう迫る“脅し”です。

 首相は「民間は厳しい。場合によってはもっと削減できるような仕組みを提出する」とも強調。しかし、公務員の賃金は首相が認めたように「民間準拠」とされており、一部の特権官僚を除いて民間より高いなどというのはデタラメです。官民あげての賃下げ競争がさらに激化することになるだけです。

 すでに日本の公務員は数(人口比)でも人件費(GDP=国内総生産比)でも主要国で最小。そのため「官製ワーキングプア」と呼ばれる非常勤職員が公共サービスを支えているのが実態であり、これ以上の削減はサービスの切り捨てを招くものです。





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