2011年1月6日(木)「しんぶん赤旗」

日航の整理解雇

「熟練者をまっ先に」

世界では異常


 台湾の台北市労働局は昨年12月23日、日本航空台湾支店が夏に18人の客室乗務員を解雇した際、「職歴が長く、年齢が高い乗務員を恣意(しい)的に解雇しようとしたのは、年齢差別を禁止する就業サービス法の規定違反にあたる」などとして、罰金60万台湾ドル(約170万円)を支払うよう命じる行政処分をおこないました。

先任制度の原則

 年齢差別禁止は、国際人権規約やILO(国際労働機関)条約・勧告、EU(ヨーロッパ連合)指令などで定められている国際基準です。米国にも年齢差別禁止法があり、台湾でも禁止されているように、解雇を含め雇用のすべての段階で年齢差別を禁止するのは、世界であたり前の原則です。

 年齢を理由とする解雇をきびしく規制するのは、それが人間の尊厳や平等という普遍的価値に反するからです。同時に重要なのは、長年働き技能を身につけた熟練労働者を大切にするという考え方が土台にすえられていることです。労働者をコストではなく財産と考え、技能を継承してこそ企業それ自体の発展があるという考え方です。ILOが近年提唱している「持続可能な企業」もこうした立場に立ったものです。

 この考え方を具体化した原則が「先任制度」です。国際的には、「ラスト・イン、ファースト・アウト」とも呼ばれています。解雇に合理的理由があり、どうしても解雇しなければならないときは、新しく入った労働者から解雇の対象とし、長く働き技能をもつ熟練労働者は、最後に解雇対象にするという原則です。

安全考えるなら

 イギリスやイタリア、オランダ、スウェーデン、スペイン、ドイツ、フィンランド、フランス、ポルトガルなど欧州の多くの国で、この「先任制度」が法律や労働協約で定められていたり、実践されています。独ルフトハンザ航空は、労働協約で「先任制度」を採用しています。米国でも慣行になっています。

 世界で確立しているこの原則に照らして、日本航空が利潤第一主義の立場から労働者をコストと考え、熟練労働者をまっ先に解雇するのは、絶対に許されない行為です。安全を最優先に考えなければならない航空会社が経験と技能のある熟練労働者を強制解雇するようでは、日本航空の「再生」はありえません。

 (党国民運動委員会・筒井晴彦)





■関連キーワード

もどる
日本共産党ホーム「しんぶん赤旗」ご利用にあたって
(c)日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 TEL 03-3403-6111  FAX 03-5474-8358 Mail info@jcp.or.jp