2011年1月4日(火)「しんぶん赤旗」

2011展望 外交

激しく変わる北東アジア

問われる日本の「外交力」


 米国の相対的な力の低下と、中国やインドなど新たな大国の台頭。領土問題で強硬姿勢を打ち出したロシアや、軍事的な主張を強める北朝鮮―。日本外交は周辺の北東アジアで直面する激しい変化にどう対応するのか、きびしく問われる年になりそうです。

「半独立」のツケ

 中国との尖閣諸島問題、ロシアとの領土問題や北朝鮮による韓国砲撃事件などが相次いだ2010年は、そのような変化が一気に表面化するとともに、日本の「外交力」が試された年でした。

 しかし、菅民主党政権はこれらの問題で何ら主体的な対応をとれず、とりわけ尖閣沖での中国漁船と海上保安庁巡視艇との衝突事件での対応をきっかけに、支持率を急落させる結果になりました。

 そして、「尖閣諸島は日米安保条約の適用区域」との言質を米側から引き出そうと腐心し、新「防衛計画の大綱」で中国や北朝鮮を公然と敵視する「動的防衛力」を打ち出す―。最後は自民党政権と同じアメリカ頼み・軍事力頼みの姿勢をとったのです。

 外務省発行の雑誌『外交』第4号でも、尖閣問題や領土問題で、「戦後65年の日本の半独立国家のツケが、つまり米国の庇護(ひご)の下に、国家主権や安全保障の問題に真剣に対応してこなかった『国の様態』のツケが回ってきている」(袴田茂樹・青山学院大教授)との指摘が出るようなありさまです。

 これに対して日本共産党は、尖閣諸島は歴史的にも国際法上も日本固有の領土であり、領土問題でのロシアの対応や北朝鮮による韓国砲撃の不当性を明確に示す見解を発表してきました。その結果、外務省がホームページに尖閣諸島問題の「Q&A」を掲載するなど、一定の変化を生み出しました。

 中国との尖閣諸島問題も、ロシアとの領土問題も何ら解決していません。朝鮮半島は依然、緊張状態が続いています。そうであるからこそ、歴史的事実と国際法の道理に立った原則的な外交姿勢が求められます。

「同盟深化」訪米

 日米関係では、今年前半に菅直人首相の訪米が予定されています。そこでは、「同盟深化」に関する「共同のビジョン」(オバマ米大統領)が示されます。

 しかし、「どのような立派な文書を出しても、必ず『普天間はどうした』と言われる」(外務省筋)との声が上がっているように、首相訪米までに沖縄・米軍普天間基地「移設」問題の“解決”の展望はありません。

 このため、政府は普天間「移設」を拒む名護市への米軍再編交付金の停止を表明し(北沢俊美防衛相)、普天間基地の継続使用まで言及(前原誠司外相)するなど、なりふりかまわない動きに出ています。

 普天間基地問題は今年も、日米同盟をめぐる最大の焦点になりそうです。

TPP、温暖化

 日本の農業や経済に破壊的な影響をもたらす環太平洋連携協定(TPP)への参加の是非も、大きな焦点になります。前原外相は「経済外交」を掲げ、その第一の柱に「国を開く」ことを挙げています。前原氏は11月にホノルルで開かれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)までに参加の是非を表明すると述べています。

 昨年の気候変動枠組み条約第16回締約国会議(COP16)で、財界の意向を受けて京都議定書の延長に反対を表明した日本は厳しい批判にさらされました。

 COP17では、京都議定書の下での新たな枠組みづくりが議題になります。日本政府の対応が再び、問われることになります。


〈主要外交日程〉

1月 前原外相訪米 6〜10日
   ゲーツ米国防長官アジア歴訪 9〜14日(日本は13〜14日)
   世界経済フォーラム(ダボス会議)年次総会 26〜30日、スイス・ダボス

5月以降? 菅首相訪米、「日米同盟深化」に関する共同文書発表

6月 G8サミット フランス・ドービル

9月 国連総会 ニューヨーク

10月 東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳会議、東アジア首脳会議 インドネシア

11月 アジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会合 12〜13日、米国・ホノルル
   国連気候変動枠組み条約第17回締約国会議(COP17) 28日〜12月9日、南アフリカ・ダーバン

未定 日韓首脳会談





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