2011年1月3日(月)「しんぶん赤旗」

2011展望 内政

消費税増税によらない社会保障を

労働者派遣法の抜本改正が焦点


社会保障

写真

(写真)「公的保育制度を守れ」と訴える人たち=昨年12月6日、東京都千代田区

 今年は、社会保障のあり方をめぐり国民の暮らしを支える方向か、負担増を押し付ける方向か、が鋭く問われる年になります。

 菅内閣が「社会保障の財源のため」という口実で、今年半ばまでに消費税増税に道筋をつけようとしているうえ、医療と介護の報酬改定(2012年4月)に向けた議論も始まるからです。

 菅政権が消費税増税を改めて打ち出したのが「社会保障改革の推進について」の閣議決定(昨年12月)です。同閣議決定が「基本方針」とするのが、民主党の「税と社会保障の抜本改革調査会」(会長・藤井裕久元財務相)「中間整理」や「社会保障改革有識者検討会」(座長・宮本太郎北大教授)「報告」(いずれも昨年12月)です。消費税を特別会計にして社会保障財源の中心にし、社会保障を「高齢者3経費」(医療・介護・年金)にすることを打ち出しています。「社会保障」の範囲を限定したうえ、消費税増税か「社会保障」かを迫る方向です。

国民的議論に

 菅内閣は、「受給と負担」を明確にするとして「社会保障・税の共通番号制度」の導入も重点課題に打ち出しています。

 これでは国民の安心を支える社会保障制度はできません。消費税増税に頼らない社会保障のあり方を確立する国民的な議論が求められます。

 公的保育制度を解体する「子ども・子育て新システム」も優先課題と位置づけられ、1月中に法案要綱をまとめようとしています。

 これらは、国民的な抵抗をよぶものばかりです。「子育て新システム」の議論も、当初の予定どおりには進んでいません。抵抗を無視して議論を進めても行き詰まるのは必至です。国民的な批判と運動がカギを握ります。

いっせい批判

 後期高齢者医療制度に代わる「新制度」案にも、現行制度と高齢者差別の点で変わらない、といっせいに批判が上がっています。通常国会に法案が出せるかは不透明です。

 介護保険法改定案も世論の批判を恐れて負担増を盛り込めませんでした。しかし、介護度の比較的軽い「要支援」者を市町村の判断で保険から外す仕組みが盛り込まれようとしています。医療給付費抑制のために、医療が必要な人を介護に回し、介護は重度に重点化する流れの一環です。

 医療と介護の報酬改定に向けた議論では、加えて、施設から在宅へという動きも狙われています。

 障害者権利条約の理念を反映させるため障害者基本法改定案が通常国会にかけられます。「障害の有無にかかわらず基本的人権が尊重される社会」という理念が盛り込まれるかが試金石です。応益負担撤廃を求めるたたかいも続きます。

雇用

 雇用問題では、3年越しとなっている労働者派遣法の抜本改正が焦点です。

 政府の労働者派遣法改定案は、8カ月間も審議が行われていません。製造業派遣の原則禁止から短期雇用を除くなど「抜け穴」だらけですが、自民党などはそれでも「アンチビジネス」(反企業的)だと反対しています。

待ったなし

 速やかに審議に入るとともに抜本的な修正を行い、製造業派遣を全面禁止にするなど労働者の願いに応える抜本改正が求められます。

 昨年雇い止めされた非正規労働者は4万5千人を突破。操業短縮など休業者は100万人を超え、大学新卒者の就職内定は過去最低です。

 失業給付が切れる労働者が相次いでおり、生活と就職支援の拡充は待ったなしです。就職活動の早期化・長期化を是正し、採用枠の拡大などへ政府の指導力が求められます。

 人減らしをやめさせ、「正社員が当たり前」の社会をつくるために大企業に社会的責任を果たさせることが求められています。

 労働政策審議会では有期雇用研究会の報告を受けて法案化の議論が始まります。合理的理由のない有期雇用を規制するなど、不安定で低賃金の有期労働者の待遇改善につながる法案が求められます。

基本権回復を

 公務員労働者をめぐっては、戦後すぐにはく奪された労働基本権の回復が焦点です。政府は、労働条件を交渉で決める「労働協約締結権」を回復する内容の「たたき台」を発表。通常国会に法案を提出する考えです。

 しかし、「たたき台」は「コスト」論が優先され、権利を与える職員の範囲を狭めるなど問題点を抱えています。外国では当たり前の争議権も除外されており、労働基本権回復に向け、本格的な議論が求められます。





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