2011年1月1日(土)「しんぶん赤旗」

ドミニカ共和国 米系工場労働者 最賃の3倍

「生活賃金」で夢の実現


 米国で人気が高い大学のロゴ(シンボルマーク)入りのTシャツや運動着、帽子。その多くは国外にある縫製工場で生産されていますが、労働者は低賃金を強いられています。そうしたなか、昨年春にカリブ海のドミニカ共和国で本格操業に入ったある米系工場は「生活賃金」と呼ばれる制度を導入しました。120人の労働者は現地の最低賃金の3倍以上を受けとっています。(ワシントン=西村央)


公共性高い企業で導入

地図:ドミニカ共和国

 「生活賃金」は、米国政府の定める最低賃金にとどまらない、労働者が生活できる賃金。1994年にメリーランド州ボルティモアで制度が導入され、全米百数十の自治体で取り入れられています。

 自治体や大学など公共性の高いところから仕事を受注している企業の労働者を対象にしています。

 米国の非営利組織(NPO)、ワーカーズ・ライツ・コンソーシアム(WRC=働く者の権利協会)は10年ほど前から、各地の大学に対して、ロゴ入り製品を発注の際は、発注先の労働者の人権や労働条件を守るための「基準」を設けるよう要求してきました。

 WRCは企業とも交渉。その一つ、大学ロゴ入り衣料品製造最大手のナイト・アパレル(本社、米サウスカロライナ州)は、企業の社会的責任を理念として、「生活賃金」を受け入れました。ドミニカ共和国で新たに開業したアルタグラシア工場では、全米100大学のロゴ入り商品を製造しています。

 輸出用商品生産のために、外国企業が自由貿易地域(FTZ)に進出した場合、たとえばメキシコでは、企業側が安い賃金を押し付けるケースが目立っていました。

 それに対し、アルタグラシア工場ではFTZでの最低賃金、月148米ドル(約1万2136円)に対し、497米ドル(約4万754円)が保障されています。

 同工場の労働条件に関する報告書を出している、米ジョージタウン大学のジョン・クライン教授(国際経済)は、生活賃金の導入で「夢の実現」ができたとして、▽栄養のある食料を確保する▽寝室と他の空間を壁で隔てる住居を確保する▽子どもの教科書や制服を準備し、小学校課程を終えていない親が再履修できる―ことをあげています。

 生活賃金導入には米マスコミも注目。ニューヨーク・タイムズ紙はナイト社の事例を紹介(昨年7月)するなかで、良好な労働条件と経営向上は「相互に排除しあうものではない」という同社のジョセフ・ボズィック最高経営責任者(CEO)のコメントを引用しています。





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