2010年12月31日(金)「しんぶん赤旗」

師走の街から

東京・サンドイッチウーマン

炊き出しで食費うかす


時給222円、交通費出ず

 東京・山手線のサラリーマンの街にあるJR駅前広場。パチンコ店やカラオケの案内広告ボードを持って立つサンドイッチウーマンがいます。都市近郊に住む秋山明美さん=仮名=です。


写真

(写真)炊き出しに並ぶ女性。「ホームレスではありません」と強調します=東京・上野公園

 「40歳になります」と名乗った明美さんに初めて会ったのは、東京・上野公園で毎週土曜日に行われるホームレスへの炊き出しでした。

ピンクのコート

 男性の高齢者が多い炊き出しの列で、ピンクのダウンコートを着た女性の姿は目立つ存在です。

 食事が済んだあと、声をかけました。

 「ここに並ぶのはいつからですか」。「先週からです。今回で2回目。でも、ホームレスじゃないですよ。アパートに住んでいます。食事をいただくだけですから…」。ホームレスでないことを何度も強調しました。

 「なぜここに並ぶことになったのか、いきさつを聞かせてもらえますか?」。「駅の名前は出さないでください」と、断って話しだした明美さんの事情はこうです。

 駅頭に立つサンドイッチウーマンの日給は朝9時半から夕方6時半までの仕事で2000円。時給約222円にしかなりません。東京都内で働く労働者に適用される最低賃金821円を、大きく下回っています。「往復の交通費は出ませんから1日1000円にもならないのです。食事代をうかすために並ぶのです」

 1人暮らしの高齢者、車いすの障害者、働き盛りの男女のペア―。明美さんのように、路上生活者ではない炊き出し利用者が最近見られるようになりました。

 炊き出しをするボランティアは言います。「私たちは食事を必要としている人に炊き出しをしていますから、並んだ方、どなたにも提供しています。たしかに最近は路上生活者以外の方も並んでいますね」

仕事見つかれば

 秋田県出身の明美さん。中学卒業後に東京に出てきて定時制高校で働きながら学び、卒業しました。「製造業の工場で5、6年正社員として働きました。男職場で居づらくて辞めました」

 その後は、アルバイト、パート、派遣、手伝いなど非正規といわれる仕事で働き続けました。「風俗で働いたこともあります」

 現在、男性と同居。家賃は男性が払っていますが、生活費は別々です。「サンドイッチの仕事は辞めようと思っていますが、次の仕事は、おいそれとは見つからないのです」

 総務省の調査によると今年10月の女性の失業率は4・6%。女性の非正規雇用者率53・3%。半数以上が非正規労働を余儀なくされ、女性の平均賃金も295万7200円(厚労省・賃金構造基本統計)。男性の平均賃金461万3800円より165万円以上も安いのです。

 「次の仕事が見つかるまでの辛抱です。食事がいただけるだけでもありがたいです」





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