2010年12月29日(水)「しんぶん赤旗」

主張

11年度軍事予算

危険な戦争への備えをやめよ


 民主党政権が初めて一から手がけてつくった2011年度予算案は、福祉や暮らしの予算は抑える一方、軍事費については依然として4兆7752億円と、5兆円近くを確保し、事実上「聖域」扱いを維持しています。

 先日閣議決定した新「防衛計画の大綱」の軍拡計画を背景に、アメリカと軍需企業の要求を最優先にし、日米軍事同盟の強化と軍備増強を加速させる危険な予算です。軍事費を削って暮らしに回してほしいという国民の切実な願いにまったく応えていません。自民党と変わらない菅直人政権の危険な本質を鮮明にしています。

露骨な「軍事対応主義」

 11年度軍事費の特徴は、自衛隊を必要に応じてどこにでも緊急展開する、新「大綱」の「動的防衛力」構想を取り入れたことです。北朝鮮や中国の「脅威」を口実に、日本の「南西地域」などの軍事態勢を強化するのが中心です。潜水艦の建造と耐用年数の延長、現有の輸送機C1を航続距離・輸送能力を向上したC2に代えるなど、装備を強化しようとしているのはそのためです。

 「動的防衛力」構想は、軍事力には軍事力でという「軍事対応主義」がむきだしです。沖縄の戦闘機部隊の強化や沖縄県与那国島などへの陸上自衛隊の配備、緊急時の部隊展開などはそのあらわれです。これでは周辺国との緊張を逆に高めることにしかなりません。北東アジアの平和にいま重要なのは、軍事力強化ではなく、問題を平和的に解決する外交力です。

 しかも、それは海外派兵強化と海外での戦争に備えることも狙いにしています。ヘリに防弾板を装着し、輸送機に自己防御装置を装備するのは、日本が米軍とともに海外で戦争するための備えです。戦争を放棄した憲法に違反するのは明白です。

 11年度軍事費で、削減が焦点となった在日米軍のための「思いやり予算」は、現行水準の1858億円となりました。「思いやり予算」とグアムでの米軍基地建設費の負担を含む米軍再編経費1230億円、沖縄に関する日米特別行動委員会(SACO)経費101億円の総額は3189億円になります。これは過去最多の今年度に次ぐ規模です。

 民主党政権は「思いやり予算」を見直すと公約しましたが、北朝鮮や中国を「抑止する」という米政府の要求に屈して、5年間現状維持するとしたものです。日米地位協定でも日本が負担することになっていない「思いやり予算」を削減するための交渉もできず、国民への公約をほごにした菅直人政権の責任は重大です。

大胆なメス入れるとき

 政府は財政が破たんし、財源が乏しいといって、社会保障や生活関連予算を切り縮めています。しかしその一方で、法人税減税などで大企業・大資産家を優遇し、軍事費を聖域にするというのでは筋が通りません。道理の通らない「思いやり予算」などの米軍経費は全廃し、軍事費を大幅に削減すれば暮らしに回せるのは明らかです。

 軍事力で平和は生まれません。政府はアメリカいいなりに日米軍事同盟を強化し、自衛隊の軍備を増強する政策をきっぱりやめるべきです。日米軍事同盟の呪縛から抜け出て、軍事費に大幅削減のメスを入れることが不可欠です。





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