2010年12月29日(水)「しんぶん赤旗」

未払い賃金1300万円解決

国の立て替え払い制度適用

仙台の労働者 組合に入り勝ち取る


 「苦労のしがいがありました。正直、やっと終わったという気持ちです」。国が未払い賃金を立て替え払いする制度を適用させ、2カ月から9カ月分の未払い賃金、アルバイトなどを含めて15人で総額約1300万円を勝ち取った「アイグラフ」の労働者は語ります。(宮城県・佐藤信之)


 「アイグラフ」(仙台市青葉区)は、観光やイベント、自治体のキャンペーンなど幅広い企画デザインを手がけていました。ところが社長の放漫経営で賃金が滞りがちになり、辛抱して働いていた労働者も、今年6月に全員退職しました。

仕事に愛着

 伊藤明さん(仮名)は「仕事に愛着があって、みんな借金して、がんばってやっていた。今の景気では次の仕事が見つかる保証もなく、やめる勇気もなかったんです。でも、それも限界でした」と話します。最長で9カ月分300万円を超す未払いでした。

 「このままで終わらせるわけにはいかない」。退職した7人が相談し、損害賠償請求訴訟も考えましたが、「相手に払うお金がなければ勝ってもお金はもらえない」と言われ、困っていました。そんなときに出合ったのが宮城一般労働組合でした。未払い賃金の立て替え払い制度を7月の初めに知ります。

 全員で組合に入り、制度を適用させるためのたたかいが始まります。同制度は、会社が事実上の倒産に該当すると労働基準監督署が判断すれば、適用されます。

包囲の行動

 まず、社長に直談判し、経営放棄の確約書を取り、仙台労働基準監督署に提出。しかし、社長が密かに取引を続けていたために適用になりませんでした。今度は取引先を回ったり、社長の居場所を突き止めたり、社会的に包囲する活動にとりくみ、社長も経営を断念しました。

 10月に仙台労働基準監督署が認定し、12月に労働者健康福祉機構から未払い分の賃金が支払われました。いま、一人ひとりが新しい年、新たな人生に確かな一歩を踏み出しています。

力を合わせた成果

 宮城一般労働組合の鈴木新(しん)委員長の話 このケースは残念ながら多くの労働者が泣き寝入りするパターンです。それを組合員が力を合わせて、工夫と苦労で勝ち取った成果です。年末、間に合って本当によかった。


 未払い賃金の立て替え払い制度 企業の倒産によって賃金が未払いのまま退職した労働者に対して、「賃金の支払い確保に関する法律」に基づき、一定の範囲内で独立行政法人・労働者健康福祉機構が事業主に代わって未払い賃金を支払う制度。この場合の倒産には、(1)事業主の申し立てで、裁判所が決定あるいは命令する(2)労働者の申請で、労働基準監督署が認定する「事実上の倒産」―の2通りがあります。





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