2010年12月27日(月)「しんぶん赤旗」

主張

神奈川県「池子の森」

これ以上の破壊やめるべきだ


 貴重な生物がすむ「池子の森」(神奈川県)の横浜市側に、米軍家族住宅を建設する政府の動きに住民の反発が広がっています。

 日米両政府は9月の日米合同委員会で、横浜市側に米軍住宅を約400戸建設する計画を決めました。当初の700戸を400戸にしたのは住民の強い反発があったからです。しかし横浜市側の森を大きく破壊することに変わりはありません。10月の国連生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)は、「生物多様性の損失の根本原因に対処」する目標を決めたばかりです。政府が池子の森を破壊し「損失」を広げるのは重大です。

生物多様性の保護義務

 池子の森は、逗子市側で80ヘクタールが開発されたものの、逗子側210ヘクタールと横浜市側36ヘクタールがひと続きの森となっており、首都圏の貴重な自然の宝庫です。政府の計画は横浜市側分の半分を開発し約400戸の住宅をつくるというものです。開発が池子の森全体のいのちを奪うことになるのは、政府も神奈川県も認める事実です。

 神奈川県は、「数百ヘクタールにわたるまとまりのある森林は、…首都圏の海岸部という広い範囲でみても極めて少なく、この面からみても池子の提供施設の緑は相対的に価値が高くなっている」(1987年)とのべていました。横浜市側の36ヘクタールを半分にすれば、ひと続きの森だからこそ生まれる生物の多様性と生態系を分断・破壊し、森のいのちが奪われるのは明白です。

 防衛省は、87年に神奈川県にだした環境影響評価報告書で、横浜市側に天然記念物で絶滅危惧種のオジロワシや日米渡り鳥条約で保護対象に指定されているキビタキやカシラダカなど17種をはじめとした貴重種がいることを確認しています。逗子市側でみられる絶滅危惧種のハヤブサや準絶滅危惧種のチョウゲンボウがいることも住民によって目撃されています。

 この事実を知りながら、政府が横浜市側の森を開発するのは、池子の森全域から生物を駆逐する暴挙です。生物多様性を守ろうという国際的な流れにも反します。

 日本が議長国となったCOP10名古屋会議は、「生物多様性の損失の根本原因に対処」するため、「2020年までに、森林を含む自然生息地の損失の速度が半減、また可能な場合にはゼロに近づ」けるという戦略目標を定めました。戦略目標は生息地を破壊し「損失」を大きくしないというものです。

 菅直人首相も名古屋会議の議長国あいさつで、森林の「大絶滅を食い止め」、「豊かな地球を、将来の世代に引き継いでいかなければなりません」とのべました。それなら、COP10の決定を足元から突き崩すような池子の森の破壊計画はきっぱり断念すべきです。

住宅建設計画の断念を

 もともと94年の防衛施設庁(当時)、神奈川県、逗子市の「3者合意」には横浜市側に住宅をつくる計画はありませんでした。400戸もの住宅をつくる計画が「3者合意」に反しているのは明白です。横浜市側での住宅建設に反対する住民のたたかいにこそ大義があるのは明らかです。しかも生物多様性の保護が国際社会の大勢となるなど、以前と違ったたたかいの条件も広がっています。

 「自然を守れ」の声を大きくし、米軍住宅建設をやめさせる運動を広げることがいよいよ重要です。





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