2010年12月27日(月)「しんぶん赤旗」

いすゞに利益還元させた

一時金上乗せ 非正規と正規が共同


 大手自動車メーカー、いすゞ自動車(本社・東京)は、上級職以外の正規職員に「特別協力金」の名目で0・2カ月の一時金を上乗せし、定年後の再雇用者には一律4万円を支給しました。非正規労働者でつくるJMIU(全日本金属情報機器労働組合)いすゞ自動車支部の人たちと正規労働者の共同した運動が実ったもの。「ありがたい」と労働者に喜ばれています。(神奈川県・河野建一)


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(写真)いすゞ自動車藤沢工場(南門)=神奈川県藤沢市

 いすゞは2月、2010年3月期通期(09年4月〜10年3月)連結業績の見通しで、営業利益を50億円の赤字見込みと発表しました。正規労働者でつくる、いすゞ自動車労組は、賃金引き上げを見送り、年間5カ月の一時金支給を求める要求書を提出し、団体交渉を開始しましたが、いすゞは「先行き不透明、4・0カ月が最大限の誠意」として3月に組合要求を退け、組合も妥結しました。

上級のみ

 しかし、春闘終了直後の4月、いすゞは、同見通しで、営業利益を110億円の黒字に修正。年俸制の課長職以上の上級職は、13〜17%の賃金をカットされていましたが、同月から10%のカット分は解除されました。さらに8月発表の第1四半期(10年4〜6月)の連結決算で、営業利益は238億円の黒字になったため、全てのカット分が解除されました。結果として、年間5カ月の一時金が支給される形になりました。

 職場では、「なぜ、部課長たちだけ5カ月? 不公平だ」「利益の一部を社員に還元してくれ」などの疑問や不満が広がりました。その背景には、過酷な労働実態があります。

休日返上

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(写真)反響をよんだ「いすゞKOETIKA」(こえちか)

 いすゞは、藤沢(神奈川県)、栃木(栃木県)両工場で、約1400人の期間・派遣社員の契約を一方的に打ち切っています。その後、生産台数が回復しましたが、要員を増やさず、正規労働者の長時間労働は深刻化しました。

 両工場の労働者は3月以降、毎日2、3時間の残業を行い、本来は休日の土曜日も休まず出勤。真夏には、汗水たらしてくたくたになるまで働きましたが、いすゞから支給されたのは、お茶や塩味の飴(あめ)だけでした。

 JMIUいすゞ自動車支部は、9月にいすゞと団体交渉し、一時金の不公平は許されないと主張。上級職以外の正規職員にも、年間5カ月の一時金となる上積みを求めました。4回の交渉を重ねるなか、再雇用で栃木工場に働く同組合員の男性(62)に、いすゞから「特別協力金」として4万円を支給するとの連絡が入りました。男性は、「『特別協力金』は職場から歓迎されています。今後も、声を正確に捉え、粘り強く取り組んでいきたい」と語ります。

門前ビラ

 藤沢工場で正規労働者として働く福島正信さん(58)らが発行する門前ビラ「いすゞKOETIKA」(「こえちか」、みんなの声を力にの意味)も大きな役割を果たしました。

 「だまされた! 110億の黒字なのに 冬のボーナスで5ケ月(年間)とり戻せ!」

 「こえちか」のスローガンは、労働者の気持ちをつかみ、配布すると約1500枚があっという間になくなりました。「特別協力金」の支給が決まると、「『こえちか』のおかげですよね」と労働者が福島さんに話しかけました。

 福島さんが語ります。

 「職場の矛盾を声に出し、正当な要求をあきらめないで要望し続けてきたことが、会社を動かすことにつながりました。これからもみんなの声を大切にして、『こえちか』を発行し続けたい」





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