2010年12月20日(月)「しんぶん赤旗」

小沢元代表に新たな資金疑惑

91人に4億4900万円 原資語らず

09年総選挙めぐり


 「政治は力、力は数」という言葉がよみがえりました。故田中角栄元首相の言葉です。“復活”させたのは元首相の“秘蔵っ子”、民主党の小沢一郎元代表。小沢氏が昨年の総選挙で政権交代に向け、91人の同党候補者にばらまいた金額は4億5000万円近くにのぼります。看過できない新たな資金疑惑が浮かび上がりました。

 (「政治とカネ」取材班)


「チルドレン」大量擁立

 先月中に、2009年の政治資金収支報告書の中央分(総務相所管)と地方分(各都道府県選挙管理委員会所管)が出そろいました。これによると、国会議員で、もっともカネを集めたのは小沢氏でした。

 その中心が、資金管理団体「陸山会」。小沢氏が支部長を務める民主党岩手県第4区総支部から4億1400万円、小沢氏からの借入金3億7000万円、マンション売却益約7000万円など、約9億1282万円の収入を計上しています。

 豊富な資金力を背景に小沢氏は、昨年の総選挙で、みずからが総理となることも含め政権交代に向け、「小沢チルドレン」の大量擁立など、勝負に出たのです。

07年返済4億円が原資?

 問題は、衆院解散当日の09年7月21日に89人に配った4億4200万円(このほか、7月27日に1人に200万円、8月17日に1人に500万円)にのぼるカネの原資です。

 小沢氏は、解散前日の7月20日に3億7000万円を陸山会に貸し付けており、これが元手になったとみられますが、その原資は何か、ということです。

 陸山会の東京都世田谷区の土地購入をめぐる虚偽記載事件では、土地代金の原資とされた4億円は小沢氏が04年10月に陸山会に貸し付け、07年5月ごろに返済されたとされます。

 この返済された4億円が、今回の貸付金に充てられた可能性があります。

 土地購入代金の原資について、小沢氏側は、「政治献金」「金融機関からの借り入れ」「積み立ててきた個人の資産」と説明を二転三転させ、出所は明確になっていません。

 「積み立ててきた個人の資産」といいますが、小沢氏が国会に提出している「資産等報告書」には、預金も貯金も「なし ゼロ円」。小沢氏には右から左に回せる何億円ものカネが、公表義務のない当座預金や普通預金、あるいは公表対象外の「タンス預金」であるのか―。91人の民主党候補にばらまかれたカネの原資は、ヤミ献金が指摘されている水谷建設などのゼネコン・マネーではないのか―。徹底的な解明が求められています。

新生党資金 私物化疑惑

 小沢氏は、昨年の衆院解散翌日の7月22日に陸山会から3億7000万円の返済を受けています。

 このカネは「改革フォーラム21」から、小沢氏が支部長を務める民主党岩手県第4区総支部を経由して衆院解散翌日に受け取ったカネでした。

 改革フォーラム21の資金は、小沢氏が代表幹事だった新生党が1994年12月に解党した際、党本部と新生党防衛支部、同運輸支部など10支部から受けた9億2526万円にのぼる寄付をプールしていたものです。

 このなかには、約5億円の立法事務費という税金が含まれています。結果として、公金が、民主党候補に配られ、みずからの支持グループを形成する軍資金に充てられたことになります。

 しかも、改革フォーラム21と陸山会という政治団体間の寄付の上限(年間5000万円以内)という規定をかいくぐるために、量的制限のない政党支部を経由させたという迂(う)回(かい)疑惑も指摘されています。

捜査さなか また不記載

 09年の収支報告書公表では、民主党岩手県第4区総支部に計7400万円もの不記載がありました。

 受け取った側の陸山会、小沢一郎東京後援会、誠山会の3団体の収支報告書には、記載がありました。

 小沢氏側は、「事務的なミス」として岩手県選管に訂正報告を行いました。しかし、総支部の支部長、陸山会の代表とも小沢氏です。出す側と入れる側が同じで、「事務的なミス」では通用しません。

 政治資金規正法は、政治資金の収支の公開や授受の規制を通じて、「政治活動の公明と公正を確保し、もって民主政治の健全な発達に寄与することを目的とする」とうたっています。

 陸山会の同法違反(虚偽記入)事件の捜査のさなかだった09年に、7400万円もの記載漏れをしていた小沢氏の責任は重大です。

図:09年総選挙を中心とした小沢氏をめぐる資金の流れ




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