2010年12月20日(月)「しんぶん赤旗」

就職難打開と就活是正

問われる政治の責任


 「大学3回生から就活を始めてエントリーは150社」(関西の私大4回生)、「この先、たくさんの企業に落とされると思うと希望がもてなくなる」(帝京大学3年の女子学生)―大学生の就職内定率が57・6%(10月1日時点)と1996年の調査開始以降最悪となっています。就職難打開と過熱した就職活動の是正に政治がどう責任を果たすかが問われています。(藤原直)


働くルール確立こそ

 菅政権が進める新卒者雇用「緊急対策」の柱は、「大企業志向の強い新卒者」と「中小企業」との「ミスマッチ解消」です。

 しかし、約1年間の就活で福祉施設に内定した神奈川県の私大男子4年生は語ります。

 「たしかに福祉・介護分野は人手不足だけど、条件が悪くて学生が選びづらい。他にも積極採用の業界はあるが離職者が多く、(ひどい労働を強いる)ブラック企業も少なくない。学生も長く働きたいと思っているので働くルールがしっかりしていかないと厳しい」

 就職連絡会の佐古田博さん(日高教副委員長)は「若者が中小企業に安心して就職できる体制をつくるべきだ」と指摘。中小企業への本格支援、大企業との関係見直しなど課題は山積しています。

勉強時間奪う就活の早期化

 就活の早期化、長期化、過熱化の是正も待ったなしです。3年夏には企業との接触が始まり、学生からは「就職情報サイトに登録すると1日100件のメールがくる」「膨大な課題に追われ、勉強の時間がない」と悲鳴があがっています。

 菅政権は11月22日、文部科学省内で、関係省庁と日本経団連など経済4団体、大学団体の代表らが一堂に会する「新卒者等の就職採用活動に関する懇話会」の初会合を開きました。過熱した就職活動を是正するルールをつくるために、日本共産党が重ねて求めてきたものです。政府が重い腰をあげたのは一歩前進です。

 一方で、この懇話会は議事要旨も含めて非公開。「自由な議論の妨げになる」というのが理由で、企業側の委員名も公表されていません。出席した閣僚も高木義明文科相だけ。同省担当者は、「行政は事務局。あくまでも当事者同士の意見交換の場だ」と一歩引いた姿勢です。

守られる合意待ったなし

 日本共産党の笠井亮衆院議員は5日、都内での「就活シンポ」で、「大企業に社会的責任を果たさせる必要がある」と指摘。かつて企業と大学の間で結ばれた就職協定が、個々の企業の協定破りの末、97年に廃止された経過を踏まえ、「政府も積極的な役割を果たし、今度こそ守られる合意をつくることが大事。ルールづくりは待ったなしだ」と話しました。

 帝国データバンクの調査によると、55・4%と過半数の企業が採用活動の開始時期を遅らせることに賛成しており、反対は6・9%にすぎません。

 商社でつくる日本貿易会(槍田松瑩会長・三井物産会長)は11月17日、13年春入社の新卒者から、採用試験を4年生の8月以降へ遅らせる採用活動の見直しを「全産業が一致して実施」するよう提案しました。ところが、日本経団連の米倉弘昌会長は11月22日の会見で、この提案について「実現不可能なことを決定してもどうしようもない」と語りました。いまこそ政治の役割発揮が求められています。





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