2010年12月17日(金)「しんぶん赤旗」

第一生命 新たな不払い

カルテ保管期限切れ分追加案内

請求できぬ恐れ

低額「見舞金」も知らせず


 生命保険業界で問題になっている保険金不払いの額が最多の第一生命(本社、東京都千代田区)は先月末、新たな不払いを公表しました。その対象となる支払いで、請求案内が遅れたために保険金が受け取れない契約者が続出する恐れがあることが16日、関係者の証言と内部資料で明らかになりました。(矢野昌弘)


 保険金の支払いをうけるには、医療機関の診断書が必要です。そのためにはカルテが必要ですが、医師法で定めるカルテの保管期間は5年間です。

 ところが第一生命が今回、追加の請求案内をするのは、カルテの保管期限が切れた2001年度から05年度の5年分の事例です。これでは診断書が出せない契約者が続出します。

 その対策として、同社がとったのは「見舞金の支払い」です。本紙が入手した同社の内部文書によると、「『(1)治療先医療機関から証明が受けられないケース』または『(2)治療先医療機関が廃院となり証明が受けられないケース』について、見舞金の支払いを行う」としています。

 しかし、見舞金について第一生命は、契約者への案内に書いていません。

 生保業界関係者は「第一生命の狙いは、カルテの廃棄であきらめた人には払わずに済ませることだ。見舞金は、苦情を言ってきた契約者に金融庁などへ通報させないための対策。見舞金の額は、本来もらえたはずの保険金より少なくなっている」と指摘します。

 今回の支払い対象ケースは、同社が「別病院事案」とよぶもの。病院で治療を受け、保険金や給付金を請求した契約者が過去に別の病院で受けていた治療分を請求していなかったケースです。

 追加支払いの規模を同社は「2千件程度」としています。しかし関係者によると、同社は最近までに3万件の案内を送付。最終的に10万件規模になる見通しだといいます。

 同社は、05年に発覚した不払い問題で約7万件、総額189億円の不払いを金融庁に報告。金融庁は08年7月に「必要最低限の調査は行われた」として、業務改善命令にとどめる軽い処分を第一生命など10社にだしました。今回、新たに不払いが発覚したことは、処分にかかわる重大問題です。

 本紙の取材に同社は「意図的に後回しにするようなことはございません」としています。

 同社は、不払い発覚後、民主・自民両党の国会議員のパーティー券購入や自民党への政治献金を増額するなどの政界工作も問題になっています。


 カルテの保管期限 「医師法」24条で、カルテの保管期限を最終の診療から5年間としています。またレントゲンや手術記録などの「帳簿および書類その他の記録」については3年間の保管義務が「保険医療機関及び保険医療療養担当規則」9条で定められています。

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