2010年12月17日(金)「しんぶん赤旗」

主張

政府「税制大綱」

ボスは財界 はっきり見えた


 民主党政権は16日、2011年度の「税制改正大綱」を閣議で決定し、財界いいなりに5%の法人減税を盛り込みました。

 所得税・住民税では中高所得者の控除を縮小する一方で最高税率は据え置きました。株式の配当・取引にかかる税金を半減している証券優遇税制は、さらに2年間延長します。相続税では最高税率の引き上げを5%にとどめ、他方で相続税を免除する基準(基礎控除)を引き下げて、より小さな相続資産への課税を強化します。

どこを向く民主党政権

 5%の法人減税をめぐるいきさつは、民主党政権がどこを向いているかを明確に示しました。

 当初、政府税制調査会では、法人税率引き下げの財源を大企業優遇税制の縮減でつくる案を検討していました。6月の「財政運営戦略」で、新たな予算が必要な施策は安定財源を確保して提案しなければならないと決めたためです。これは7月の概算要求基準にも盛り込まれています。

 小泉「構造改革」で定率減税の廃止や年金課税の強化など庶民には増税が続き、大企業には研究開発減税の拡充をはじめ減税の大盤振る舞いが続きました。いま大企業は244兆円ものため込み金を抱え、手元資金は52兆円に達しています。大企業優遇税制を是正するのは当然であり、生み出した財源は国民の暮らしの予算に充てることが求められます。

 基礎年金の国庫負担を維持する財源の確保もおぼつかない状態にもかかわらず、大切な財源を「金余り」の大企業向けの税率引き下げにそっくり回す―。それだけでも十分に異常です。しかし、それだけにとどまりませんでした。

 財界は大企業優遇税制の縮減幅を抑えて税率引き下げの「うまみ」を広げるよう要求し、それを菅直人首相は丸のみしました。

 民主党政権が決めたのは―。国と地方を合わせた法人実効税率を5%引き下げて大企業優遇税制の是正を一部にとどめ、大企業の利益が回復すれば約1〜2兆円にも膨らむ“純”減税です。

 税制改正大綱は法人減税の目的として「雇用と国内投資を拡大すること」を掲げています。ところが日本経団連の米倉弘昌会長は雇用と国内投資を増やすなんて約束できない、そんな約束を求めるなど「資本主義でないようなことをやってもらっては困る」と言い放ちました。

 実際にロイター通信社の12月調査によると、法人税率が5%引き下げられても「国内投資や雇用の計画」に「影響しない」と答えた企業が63%に上ります(増加方向で見直すと答えた企業は10%)。投資や雇用は市場の動向による、税率のみで投資立地が左右されるものではないという理由が多数を占めています。中には「企業減税よりも正しいところに税金を投入すべき」だとして少子化対策や高齢者福祉の優先をという企業もあったといいます。

法人減税と消費税増税

 味を占めた財界はさらに5〜10%の法人減税と消費税増税を要求しています。税制大綱は来年半ばまでに消費税増税の「成案」を示すと明記しました。消費税を増税しても社会保障には回らず大企業減税に費やされるだけです。

 財界を「ボス」に君臨させている限り、国民本位の税制改正も財政再建も夢のまた夢です。





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