2010年12月12日(日)「しんぶん赤旗」

主張

国連総会核廃絶決議

廃絶条約めざす交渉の開始を


 国連総会は、マレーシアなどが提案した核兵器禁止条約の締結に向けた決議を、圧倒的多数の賛成で採択しました。人類は核兵器と共存できず、廃絶は国際世論の強い願いです。核兵器保有国には、核兵器廃絶の課題を先送りせず、廃絶のための条約の締結に向けた交渉を、ただちに開始する責任が問われています。

国際政治の現実的課題

 マレーシアやコスタリカなどが提案した、核兵器禁止条約の早期締結に向けた交渉の開始を呼びかける決議は、賛成133、反対28、棄権23で採択されました。核兵器廃絶に向けた交渉が、国際政治の現実的な課題となっていることを鮮明にしています。

 ブラジルなど7カ国からなる「新アジェンダ連合」が提案した、廃絶に向けた措置の実行を求める決議も、賛成173、反対5、棄権5で採択されました。採決にあたって「新アジェンダ連合」は、核保有国による核軍縮措置の不履行を批判し、5月に開かれた核不拡散条約(NPT)再検討会議の決定を早期に実行することが必要だと強調しました。

 再検討会議は行動計画を盛り込んだ最終文書を採択しました。行動計画は「核兵器のない世界」を「法的枠組みのもとで追求する」として、廃絶条約を結ぶ必要があることを認めました。しかも、この点で「多くの国々は時間枠を特定することが必要とみている」としています。会議では、核兵器廃絶に向けた「行程表」を作成する必要も指摘されました。

 日本がマレーシアなどの決議に棄権したのは、唯一の被爆国として恥ずべき態度です。日本は、核兵器廃絶への措置を核保有国が受け入れる「現実的」なものであるべきだと強調し、禁止条約に向けた交渉開始を求める決議は「これとは違う」と主張しました。具体的措置は核保有国が容認する範囲にとどめるというのは、廃絶を先送りするものです。ここには、民主党政権が米国の「核の傘」に依存し、「核抑止力」論を受け入れていることが反映しています。

 核保有国を廃絶に向けた交渉に踏み切らせるには、「核抑止力」論を打破することが必要です。「核抑止力」論は、核保有国自身を核兵器に縛りつける議論であり、核兵器の廃絶とは相いれません。

 「核抑止力」論は、いざとなれば核兵器を使うぞと脅すことで他国からの攻撃を抑えようという、核兵器の使用を前提にした危険な議論です。核保有国が核兵器使用の可能性をあくまで確保しようとしていることは、非核保有国に対して核兵器を使用しないよう求めた「消極的安全保障」決議に、中国以外の核保有国が棄権したことにも示されています。

「核抑止力」論克服し

 オバマ米政権は「核のない世界」を掲げ、核兵器の役割を減らすとする一方、他国が核兵器を保有する限り「核抑止力」を維持するともしています。「核抑止力」論は核兵器の役割を認める立場にほかなりません。その矛盾は、オバマ政権が未臨界核実験を実施したことにも表れました。

 核保有国では米国とフランスが、「新アジェンダ連合」の決議とマレーシアなどの決議の双方に反対しました。核兵器の廃絶を実現するために、「核抑止力」論の克服が真剣に求められています。





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