2010年11月30日(火)「しんぶん赤旗」

年金国庫負担引き下げへ

厚労省協議 積立金取り崩しも


 財務、厚生労働両省は29日、2011年度予算案で基礎年金の国庫負担割合を現行の50%から36・5%に引き下げることで調整に入りました。必要となる2兆5000億円の財源確保のめどがつかないためです。吉田泉財務政務官と岡本充功厚労政務官が同日午前に財務省内で協議しました。

 基礎年金の国庫負担率は、04年の年金制度改悪で3分の1から2分の1に引き上げることが決められ、09年度に36・5%から50%に引き上げられました。

 09、10年度は財政投融資特別会計の積立金、いわゆる「埋蔵金」を繰り入れて国庫負担財源にあてました。しかし、財投特会の積立金は10年度末見込みでゼロと使い切ってしまうため、民主党政権では、財源のめどがついていません。国庫負担を下げた分は年金の積立金を取り崩します。

 現行の年金制度は、国庫負担2分の1の前提で計算されており、仮に今後国庫負担を36・5%に下げたままにすると、27年度に年金の積立金が枯渇して制度が成り立たなくなります。

 そのため、年金積立金を取り崩す分について、11年度中に税制抜本「改革」をして、12年度以降に金利をつけて年金会計に返済する案を検討します。しかし、12年度以降も、国庫負担財源を確保できるめどはなく、返済できる保証はありません。

 来年度すぐに保険料の値上げや給付水準の引き下げをしないとしても、将来的には保険料の引き上げか給付の引き下げが避けられなくなります。


解説

財政の抜本的転換が必要

 民主党政権が、2011年度予算案で、年金の国庫負担を2分の1から引き下げる検討に踏み込んだことは、民主党の財源論の破綻を示しています。

 同党の09年総選挙のマニフェストは、特別会計も含めた国の総予算を組み替え、無駄遣いや不要不急の事業を廃止し、「埋蔵金」を活用するなどして新たな財源を16・8兆円生み出すとしていました。

 しかし、鳴り物入りでおこなった昨年の「事業仕分け」では、国民生活にかかわる予算や学術・科学予算など無駄といえないものまで切り縮めながら、1兆円程度の財源しか生み出せず、独立行政法人や特別会計の「仕分け」でも財源を生み出せませんでした。

 民主党政権の念頭にあるのは消費税増税です。11年度中に「税制抜本改革」をして消費税を引き上げ、12年度以降、基礎年金の国庫負担50%に対応する考えが透けて見えます。「年金制度を破綻させたくなければ消費税増税を」と国民にせまるものです。

 しかし、消費税は年金生活者など社会的弱者に最も重い負担がかかります。年金を保障するための財源に、消費税をあてるのはまったくふさわしくありません。

 国庫負担の36・5%から50%への引き上げを消費税増税でまかなった場合、国民の負担は増える一方で、基礎年金拠出金への企業負担は減ります。消費税を負担しない大企業が一番、得をします。

 いまの日本経済に必要なのは、大企業が投資先もなく抱えこんでいる巨額の内部留保を、社会保障の充実や雇用の安定を通じて国民に還流し、内需を活性化することです。

 財務省は、法人税減税のためには最大で4・5兆円の代替財源を生み出せると計算しています。

 「アメリカいいなり、大企業最優先」という日本の政治の「二つの異常」に切り込み、軍事費を減らし、大企業・大資産家優遇税制を見直すという国の予算の抜本的な転換がいまこそ切実に求められています。(西沢亨子)





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