2010年11月22日(月)「しんぶん赤旗」

ゆうPRESS

科学と社会 JSAの学校

若手科学者が白熱議論

他分野からの意見 刺激に


 毎年のように生まれる日本人科学者のノーベル賞受賞者。研究者を志す若者が増える一方で、貧しい研究予算や設備が問題になっています。平和や環境の分野などで科学者としての社会的責任を果たそうと取り組む日本科学者会議(JSA)では、若手が成長できる環境づくりに力を入れています。(田代正則)


 JSAは、1965年の創立以来、平和や環境、人間のいのちとくらしを守る課題に積極的に取り組み、2008年にノーベル物理学賞を受賞した益川敏英さんも名を連ねています。

 次代を担う若手科学者・大学院生の研究環境を向上させ、成長の場をつくろうと、若手研究者問題委員会が設けられ、精力的に活動しています。

狭さを突破

 毎年恒例となっている若手合宿「夏の学校」は、若手会員たちが自ら話し合い計画しています。07年靖国神社、08年在日コリアン、09年ハンセン病とさまざまなテーマで、科学と社会の関係を学び合い、問い直してきました。

 今年(9月8〜10日・福井県)は「原子力発電所と地域社会」を選びました。原発のテレビコマーシャルをよく目にするようになったことをきっかけに、関西の院生たちが企画。東北から沖縄まで20代から30代半ばを中心に40人が参加し、福井県の高速増殖炉「もんじゅ」(敦賀市)と美浜原発(美浜町)を見学しました。

 原発に併設されたPR施設では施設職員が原発の「安全性」「有用性」を強調します。

 その後、住民運動を行っている敦賀市の山本雅彦さんと石川県の児玉一八さんが同じ資料や展示を使って“もうひとつのガイド”を行いました。

 ナトリウム漏れなど相次ぐ事故と隠蔽(いんぺい)事件、構内で働く請負労働者の事故被害―。

 生々しい実態を知り、来年大学院に進学予定の大学4年=経営学=の女性(21)は「請負による構内労働の実態を初めて知りました。大学内だけでは世界が広がらない。狭さを突破して成長していきたい」と語りました。エネルギー工学を専攻する男性(25)は、電力会社による原発依存の体制が自然エネルギーの普及を妨げているとの説明に「うちの研究科からは、電力会社に就職する大学院生も多い。こういう話を周りでも議論したい」と話します。

競争・孤立

 学術研究の多様化、細分化で互いの研究が見えにくくなる中、自然科学や社会科学の分野を超えた交流がJSAの魅力です。

 「夏の学校」でも研究を紹介する発表会が多彩に行われました。

 関東の修士課程2年の男性が風力発電の研究を報告。日本の風や気候に適した風車の開発などを紹介しました。

 参加者からは落雷や台風の事故対策、風車建設の自然環境への配慮、住民合意―技術面や社会との関係など、さまざまな角度から質問・意見が出され、白熱の議論となります。

 「以前は論文の業績をあげることに必死で、周りから孤立し、気もふさぎがちだった」と振り返る教育学の博士課程4年の男性(30)は「研究発表会では、他分野から尊敬を込めたアドバイスをもらえる。JSAは競争ではなく、互いを尊重しあうコミュニケーションができる」。

 関西の歴史学修士課程3年の男性は「分野の細分化で先生と1対1のゼミもある。集団として成長できる場をつくりたい」といいます。

 経営学博士課程4年の男性は、新自由主義の影響をあげ「研究会などでも相手の粗さがしに陥りがちだが、他人から学び、他人を評価することは大切だ」と強調しました。


研究職 活躍の場を

正規の枠減る社会問題

 現在、大学から大学院に進学する若者は、年間8万2千人で進学率13・4%(2010年4月)と、学部卒業生の7人に1人にのぼります。科学への関心の高まりと同時に、政府の大学院生急増化政策や近年の就職難も影響しています。

 大学院の修士課程(博士の前段階)を出て民間企業に就職する人も多く、ある関東の大学院修士課程1年の男性は「うちの工学系の大学生は、8〜9割が大学院に進学した。大学院まで行かないと、就職活動でも『専門家』とみてもらえない」と言います。

 また博士課程修了者も、年間1万6千人と増加していますが、教育・研究予算の削減で正規の研究職の採用枠は減り、非常勤の研究員を続ける「ポスドク」や研究職につけない「オーバードクター」が、大きな社会問題となっています。若い科学者や大学院生のなかに競争的な雰囲気がまん延しています。

 JSAは、若手科学者が社会的責任を考え、成長し合える環境をつくり、社会のさまざまな分野で活躍する科学者の育成に取り組んでいます。

図

お悩みHunter

俳優目指し、会社辞めようかと

  独身の会社員です。来年、会社を辞めて、高校時代からの夢だった俳優を目指そうと思っています。長いこと俳優になりたいと思いながら、踏ん切りがつきませんでした。自分一人くらい何とか食っていく自信はありますが、俳優になるために何からはじめたら良いでしょうか?(25歳、男性)

あせらずに未来図描いて

  あなたは、どのような俳優を目指していますか? 舞台俳優ですか、映画俳優ですか、テレビ俳優ですか。

 たとえば、舞台だけでもさまざまなジャンルがあります。新劇、歌舞伎、ミュージカル、小劇場、大衆演劇、商業演劇、洋物、和物などなど。

 俳優というひとくくりの職業であっても、あなたの目指すところによって、はじめの一歩は違ってきます。

 または、どのようなジャンルであっても、まずは、俳優の世界に飛び込んでみて、自分はどのようなタイプの俳優なのか、徐々に自分の道を切り開いてゆく方法もあります。

 ただ、俳優の仕事もそんなに甘いものではありません。あなたは、今の仕事を辞めて、来年、俳優になるための学校に入ったとして、生活費や学費はどうしますか?

 私の提案は、まず来春、夜間の俳優学校や養成所の試験を受けてみる。合格したら、昼間は会社に勤めながら、夜は俳優学校に通う。その中で、俳優としての方向性を見いだせたり、関係者と情報交換ができたり…。

 そのうえで、二足のわらじが履けなくなったときに、会社を辞めて、俳優一本で生きてみてはどうでしょう。

 あせらなくとも、夢は必ずかないます。希望を胸に、はばたいてください。


舞台女優 有馬 理恵さん

「肝っ玉お母とその子供達」など多くの作品に出演。水上勉作「釈迦内柩唄」はライフワーク。日本平和委員会代表理事。





もどる
日本共産党ホーム「しんぶん赤旗」ご利用にあたって
(c)日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 TEL 03-3403-6111  FAX 03-5474-8358 Mail info@jcp.or.jp