2010年11月21日(日)「しんぶん赤旗」

主張

就職「超氷河期」

卒業の春を泣かせないために


 政府の調査によると、来年3月卒業の大学生の就職内定率(10月1日時点)は前年より4・9ポイント下がって57・6%となりました。高校生の内定率(9月末時点)も、激減した昨年を少し上回ったものの、一昨年より10ポイント以上低い40・6%にとどまっています。

 かつて「就職氷河期」と呼ばれた時期でも大卒の内定率(10月1日時点)が6割を切ることはありませんでした。若者の就職難は、まさに「超氷河期」です。

直ちに対策の強化を

 ことし3月の大卒54万人のうち進路未定者が8万7千人、一時的な仕事に就いた人を合わせると10万人を超えました。ほとんどが就職浪人と推測される1年のみの留年者も7万2千人に上ります。高校生の就職難も深刻です。北海道庁の調査によれば、道内の高卒未就職者の35%が就職試験にさえたどりつけませんでした。

 ことしの春は、多くの若者を泣かせた春になりました。このままでは来年の春は、ことし以上に多くの卒業生を泣かせる春になってしまいます。社会人としての第一歩が失業者という社会でいいはずがありません。「さあ、これから」という希望を初めの一歩で打ち砕かれるような思いを、これ以上味わわせたくはありません。日本経済と企業にとっても「ひと」こそ何よりの宝です。「超氷河期」を打開するために社会も企業も力をつくすことが必要です。

 深刻な内定状況を受けて日本高等学校教職員組合(日高教)が談話を発表し、実効ある就職支援策を訴えました。その中で、政府も経済対策に盛り込んだ就業・進路選択支援の専門家の増員など人的配置をいっそう充実させること、既卒者を新卒扱いで採用する企業への奨励金など、大企業も対象にしている補助金を中小企業に集中して中小企業の求人を下支えすることを提起しています。とくに、体力のある大企業が積極的に求人を出して社会的責任を果たすことを強く求めました。

 政府は就職活動の現場からの切実な声に応えて、直ちに対策を強化すべきです。

 新卒採用数の確保は企業経営の持続性にとっても不可欠です。財界からも声が上がっています。「(かつての就職)氷河期では企業は新卒採用を抑制し、その結果、中堅層の人材の空洞化を生んだ。長期的な企業経営のためには将来を見据え、一定数の新卒採用を行うことが必要だ」(日本経団連の御手洗冨士夫会長=当時、09年11月の記者会見)

大もとに不安定雇用

 大学3年から「就活」に追われ大学教育にも重大な障害をもたらしている過熱した現状の是正も緊急課題です。既卒者の新卒扱いも含め、日本共産党は新卒採用枠の拡大、過熱した就職活動の是正を目的に、大学、経済界、政府の3者協議を直ちに開くよう提案してきました。高木義明文科相は15日の衆院予算委で「(3者の)意見交換の場を22日に設定する」と笠井亮議員に答えました。日本経済と社会にとって極めて重要な問題として真摯(しんし)な協議を求めます。

 新卒の求人減少の大もとには、正社員を減らして契約社員、期間社員など不安定雇用を増やしてきた大企業の経営戦略があります。それを後押ししてきた労働法制の規制緩和を抜本的に是正することが必要です。





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