2010年11月14日(日)「しんぶん赤旗」

日航リストラ

「整理解雇」4要件満たさず

労組「極めて違法性が高い」


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(写真)解雇に反対し会見するJALパイロットたち=10月26日、東京・羽田空港

 会社再建をすすめる日本航空(JAL)と管財人の企業再生支援機構は、パイロットと客室乗務員の早期退職募集への応募者が目標に達しなかったとして、「整理解雇」を強行する方針を決め、15日に労働組合に通告するといわれています。

 「整理解雇」は、企業が経営上の都合で人員を削減するために、一方的に労働者との雇用契約をうちきること。対象者を指名して強制解雇することになります。

 しかし企業は、経営難だからといって自由に労働者を解雇することはできません。解雇は、経営責任がまったくない労働者にはかりしれない犠牲を押し付けることになるため、実施する場合は、厳しい条件があります。最高裁などの判例で確立されてきた「整理解雇の4要件」です。これを満たさない解雇は無効となります。

 それは次のような基準です。

 (1)人員整理の必要性=解雇をしなければ企業の維持・存続ができないほどの差し迫った必要性があること。

 (2)解雇回避の努力=希望退職の募集や配置転換、出向、労働時間短縮、一時帰休など解雇回避のための努力がつくされたこと。

 (3)解雇対象者選定の合理性=何の責任もない労働者を解雇するので、対象者の選定基準、人選が客観的で合理的、公正であること。

 (4)解雇手続きの妥当性=労働者個人および労働組合に事前に十分な説明をして了解を求め、解雇の規模、時期、方法などについて、労働者側の納得を得る努力がつくされたこと。

 日航側は「整理解雇」方針を決めるに当たって「条件を満たしていると判断した」と報じられていますが、現状はとうてい基準を満たしているとはいえず、むしろ「整理解雇」の必要性がないことがますますあきらかになっています。

 日本航空乗員組合と日航キャビンクルーユニオンは11日、「整理解雇」をしなければ会社の再建ができない状態ではないことを、4点にわたって立証し、連名の補充上申書を東京地裁に提出しています。

 このなかで人員削減の目標は、10月の第2次希望退職募集を締め切った時点で、会社が当初目標としていた1500人を超えて1520人になり、すでに目標を達成していること、経営状態もことし4〜9月の営業利益が1096億円になり、計画を上回る利益が上がっており、「整理解雇」を実施してまで人員削減しなければ企業が存続し得ない状態ではないと主張しています。また10月の団体交渉で、債権者である金融機関も「整理解雇」までは要求していないと管財人代理が発言していることもあきらかにしています。

 さらに「整理解雇」を回避する努力として、諸外国で採用している一時帰休やワークシェアリングの検討を求めた組合側の主張を会社側が拒否しているとして、最大限の努力をしているとはいえないとのべています。

 こうした事実をあげて「整理解雇」は「極めて違法性が高い」と指摘しています。しかも日航の経営危機はこれまでの航空行政に原因があり、労働者に何の責任もありません。

 日航が合理性も必要性もない「整理解雇」を強行するなら、労働者の側が合法的なあらゆる手段をとって撤回を求めるのは当然であり、それが会社再建にどんな影響をもたらすか会社側の責任は重大です。(昆弘見)





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