2010年11月11日(木)「しんぶん赤旗」

すべての品目が自由化対象

「国内改革」を先行

菅内閣の経済連携基本方針


 菅直人政権がアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議を目前に控えた9日閣議決定した「包括的経済連携に関する基本方針」は、「高いレベルの経済連携」をうたい、自らすすんで「すべての品目を自由化交渉の対象」にすると宣言しました。経済連携推進のために、政府は「アジア太平洋自由貿易圏実現に向けた閣僚会合」(仮称)を設置することも決めました。

交渉開始

 「基本方針」は、焦点となっている環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)については、「各国との協議を開始する」としました。TPPは、政府が2020年に実現を目指すアジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)に向かう中で「唯一交渉が開始」されているものだとして、重視しています。

 市場を開放した場合、重大な打撃を被る農産物などの「センシティブ品目」について、「基本方針」は、「配慮を行い」としているにすぎません。主食であるコメや、サトウキビなどその生産で地域経済を支えている農産物を通商交渉から除くどころか、「すべての品目を自由化交渉対象とし、交渉を通じて、高いレベルの経済連携を目指す」と明記しています。日本政府が自ら「すべての品目を自由化交渉対象」にすると宣言しているのは重大問題です。

 「基本方針」は、各国・地域との経済連携推進するため、協定の交渉や締結前から、国内の制度「改革」を行うことを強調しています。先行的に行う「国内改革」のテーマとして挙げられているのは、(1)農業(2)人の移動(3)規制制度の「改革」です。

農業分野

 「農業」分野では、「農業構造改革推進本部」(仮称)を設置し、2011年6月をめどに「基本方針」を決定。同年10月をめどに行動計画を策定するとしています。

 現在、国境措置として取られている関税については、そのあり方を見直し、「段階的に財政措置に変更する」としています。民主党政権が実行しようというこの方針は、日本経団連が03年1月に発表した提言(奥田ビジョン)で示された方式と、そっくりです。奥田ビジョンでは「高関税および価格支持を中心とした国境措置による保護政策を改め、財政支出による直接所得補償へと抜本的に農政を転換すること」を強調していました。

 「基本方針」は、「財政措置」には「安定的な財源を確保」することが必要だとしています。国民に対する新たな増税を示唆するものであり、農業者以外の国民と農業対策との間に対立を生み出す可能性のある手法です。

人の移動

 「人の移動」については、看護師・介護福祉士などの海外からの「移動」について検討し、11年6月までに基本的な方針を策定します。

 「規制制度改革」については、「非関税障壁を撤廃する観点」を強調しています。具体策については行政刷新会議の下で検討し、11年3月までに方針を決定するとしています。

 仙谷由人官房長官は9日の記者会見で、TPP交渉参加の判断時期について、農業分野での「基本方針」ができる11年6月ごろになるとの考えを表明しています。日本の農業に打撃を与え、雇用、地域経済を崩壊させるTPP参加を幅広い運動で食い止めることが必要です。(金子豊弘)

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