2010年11月9日(火)「しんぶん赤旗」

秘密保護法「早急に検討」

尖閣ビデオ流出口実 官房長官が表明


 仙谷由人官房長官は8日の衆院予算委員会で、尖閣諸島沖での中国漁船衝突ビデオ映像の流出問題を口実に、公務員への罰則強化に言及するとともに、軍事機密を対象にした「秘密保護法」について「早急に検討して成立をはかる方向で努力したい」と述べました。自民党の石破茂政調会長への答弁。

 「秘密保護法」は、軍事情報の漏洩(ろうえい)防止を口実に、国民の知る権利と表現の自由をじゅうりんする憲法違反の法律です。

 石破氏は「われわれがずっと言ってきた秘密保護法についても逃げてはならない」と強調。「民主党はネガティブ(消極的)だった」が、「機密の保全がなければ同盟はなりたたない。アメリカから信頼されないでどうする。早急に成案を得て、成立を目指す決意を述べてほしい」と迫りました。

 仙谷氏は、「安全保障上の問題になると同盟国との関係でも機密の保全は重要だ」「石破議員がいったような制度を早急に検討して、成立をはかる方向で努力したい」と答弁しました。

 また仙谷氏は、民主党議員への答弁で「現在の国家公務員法の守秘義務規定に関する罰則は相当軽い。現在の罰則では抑止力が十分ではない」と述べ、公務員への罰則強化を目的にした「秘密保全法制」の検討に言及していました。

解説

国民の知る権利じゅうりん

 8日の衆院予算委員会で、中国漁船の衝突映像の流出問題を口実に自民党の石破茂政調会長が迫った「秘密保護法」について、仙谷由人官房長官が「早急に検討して成立をはかる方向で努力したい」と応じたことは重大な問題です。

 石破氏がいう「秘密保護法」は、自公政権時代から検討されてきました。その内容は、軍事・安全保障の秘密情報の漏えい防止を口実にマスメディアの活動や国民の知る権利をじゅうりんするもので、厳しい批判をあびてきました。

 2007年に結んだ「日米軍事情報包括保護協定(GSOMIA)」にもとづく国内法化が狙われてきました。アメリカは、日米の軍事一体化を加速するため、米軍の秘密情報を日本に共有させる条件として、広く一般国民を対象にしたアメリカ並みの秘密保護法を求めてきました。

 石破氏が「アメリカに信頼されないでどうする」と述べて、「秘密保護法」の制定を迫ったことにあらわれているように、自民党は与党時代、アメリカいいなりに、戦争態勢づくりの実態を覆い隠す「秘密保護」措置を強化してきました。

 一方、今回のビデオ流出問題は、政府の情報管理責任が問われている問題であり、いま政府に求められているのは真相の究明です。

 ところが、仙谷氏は答弁で石破氏に呼応し、「(防衛上の機密管理の強化についても)歴代内閣も苦慮しながら検討を進めてきたと推察するが、日本の戦後の過程では結実していなかった」と述べ、自民党の言う「秘密保護法」を肯定しました。

 しかし言論、出版、表現の自由を定めた憲法21条をじゅうりんし、国民の知る権利を奪う、このような「秘密保護法」が認められるものではありません。(藤原直)





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