2010年11月4日(木)「しんぶん赤旗」

2010米中間選挙

民主党が下院で大敗

政権に厳しい審判 上院は過半数維持


 【ワシントン=小林俊哉】米中間選挙は2日、投開票され、野党・共和党が連邦議会下院(定数435)で、4年ぶりに過半数を制しました。現有の178議席から50以上議席を増やしました。


 上院(定数100、改選37)でも共和党は議席を伸ばしましたが、非改選とあわせ、与党・民主党がかろうじて過半数を維持しました。

 共和党内では、フロリダ州のマルコ・ルビオ上院候補、ケンタッキー州のランド・ポール上院候補ら、極端な“小さな政府”を主張する右派運動「茶会(ティーパーティー)」の支持を受ける候補者の当選が相次ぎました。

 民主党は上院選では、激戦となったネバダ州、ウェスト・バージニア州、カリフォルニア州などを死守。しかし、下院では50議席以上を失い、1994年以来の大敗北となりました。

 同時に行われた37州の知事選でも、共和党が躍進しました。

 景気の深刻さと高止まりする失業率への有権者の怒りが、与党・民主党への強い逆風となった形です。共和党は、経済状況をオバマ政権の失政の結果だと主張。財政出動政策が財政赤字を深刻化させていると批判を強めました。

 オバマ政権は、医療保険改革や金融規制改革での成果を強調したものの、厳しい選挙戦となりました。

 共和党のジョン・ベイナー下院院内総務は同日、選挙結果について、オバマ大統領に政策方向の転換を求めるものだと述べ、対決姿勢を強調しました。

 野党・共和党が下院で過半数を占めたことで、オバマ大統領は、今後の政権運営や政策課題の推進で、難しい議会対策が迫られることになります。

解説

景気低迷・失業に怒り

 2008年大統領選でオバマ氏を当選させた熱気とは一転して、今回の中間選挙で米有権者は、長引く景気の低迷、高止まりの失業率を改善できないでいるオバマ政権に強い不満を表明しました。

 各種世論調査でも、有権者が投票する上で最も考慮した問題は、「経済」です。高失業率だけでなく、景気刺激のための財政出動措置に伴う財政赤字の深刻化も有権者の懸念材料となりました。

 有権者の厳しい視線は、オバマ政権への不満だけではなく、議会や現職議員への不信としても広がりました。有権者の「反現職」の気分を反映して、民主・共和両党とも、予備選の段階から現職議員の多くが落選。“とにかく現状を変えてほしい”との有権者の思いが、「茶会」などの新人候補に流れました。

 共和党が躍進したとはいえ、有権者が同党の政策を支持したとは言い切れません。ブッシュ前政権時代に導入した富裕層への減税措置を延長することや、オバマ政権で成立した医療保険改革法を廃止するとの同党の公約については、多くの国民が否定的です。

 民主、共和の二大政党とも、経済改善の確かな方策を、国民に示せていない現状があります。

 野党・共和党が下院で過半数を獲得したことで、オバマ政権の政策課題の推進は一段と難しくなることは確実です。

 財政出動による景気刺激策、金持ち減税の廃止、金融規制の強化などを主張するオバマ政権と、減税と規制緩和、社会保障費などの歳出削減を主張する共和党との間で、経済政策をめぐる対立が深まると予想されます。

 オバマ政権が推進する温室効果ガスの排出規制法案も、産業活動に悪影響を与えるとして強く反対する共和党が下院で過半数を占めたことで、黄信号がともっています。

 「核兵器のない世界」をめざす課題では、米ロ間の新しい戦略兵器削減条約(新START)について、共和党は批准に消極姿勢です。

 アフガニスタン戦争についても、同戦争の継続・強化が共和党の主張。オバマ政権の戦略見直しにも、影響を与えそうです。(ワシントン=小林俊哉)





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