2010年10月30日(土)「しんぶん赤旗」

働きたいのに

大学4年生 厳しい現実

学びが生きる就職遠く

200社申し込んで未決 靴底はげた


 「200社申し込んでも決まらない」「就職活動で歩きすぎて靴の底がはげた」―。大学4年生の就職が今年はいっそう厳しくなっています。実態を聞きました。(染矢ゆう子)


 東京・六本木に9月末、「東京新卒応援ハローワーク」が開設しました。「働いて独り立ちしたい」と大学4年生が多く訪れています。10月下旬、クリーニングに出したばかりのスーツを着た男子学生(21)=横浜市=は、相談員との面談に訪れました。

会計士めざし

 都内の私立大学に通いながら、公認会計士をめざして、専門学校に通いました。サークルは会計研究会に所属。公認会計士の試験に挑戦しましたが不合格。ことし3月、就職活動を始めました。

 大学の就職ガイダンスでは「50社以上まわって1社内定が出る。平均は80社」といわれています。夏に50社をまわり、それ以降は数えていません。「歩きすぎて靴の底がはげ、2足目です」と話します。

 週に2日は説明会や面接の日程をいれないと落ち着きません。「父親が3週間後には定年を迎えます。時間がない、とあせります」

 お金がかかるため、留年は考えていません。なれない革靴で駅のホームを走って転倒し、腕を負傷したことも。

 同じ会計士の専門学校に通った15人のうち、就職が決まったのは1人。サークルでは、7人中2人しか決まっていません。

 資格のある簿記や財務会計についての専門知識を生かしたいと金融や商社をまわりましたが、募集が少なく、今は営業職でさがしています。

 「何をやりたいかより、どこなら入れるかに意識が向いてしまい、狭い視野にとらわれてしまいます。単位をとりおわっても、1、2年は新卒扱いの制度をつくってほしい」と望んでいます。

2年留学して

 韓国への2年間の交換留学から帰ってきてすぐ、就職活動をはじめた4年生の女子学生(21)=東京都台東区=。「語学を生かしたい」と商社をまわりましたが求人が少なく、いまは事務や食品などをまわっています。

 大学の就職センターやハローワークを利用し、エントリー(説明会などの申し込み)は100社、書類も60社以上出しました。

 「こんなにやっても決まりません。卒業直前の3月31日に決まった先輩もいるので、ぎりぎりまでがんばりたい」

昨年より悪化

 埼玉県川越市で27日、30社が参加して開かれたハローワーク川越などが主催の若者就職面接会。ことしから大学4年生も対象になりました。

 参加した立正大学法学部の女子学生(21)=埼玉県鶴ケ島市=は200社以上にエントリーしました。説明会の予約がとれたところにすべて参加し、50社以上に書類を送りましたが、決まりません。

 「いつ切られるかわからない派遣はいやなので、正社員で働きたい。でもほとんどの会社で選考は終わっていて、面接や説明会の予定も何もありません。周りで決まっているのは2、3割。女子は全然決まっていません」

 2011年卒業予定の学生の求人倍率は前年の1・62倍から1・28倍に低下しました。全国の民間企業の求人総数(計画)は、前年の72・5万人から58・2万人へと2割減りました。(リクルートワークス調査)

 法政大学キャリアセンターの喜嶋康太課長は、10月1日現在の就職内定率は72%だと話します。昨年より数%悪化。3年前に比べると10%違います。早々に留年を決めている人もいて、続けている学生は1割ぐらい。年々留年する学生の数は増えています。

活動は長期化

 大手銀行の一般職の採用が半減し、とくに一般職を希望する女子学生が苦戦しているといいます。大学への求人も2割減りました。

 「大手だけでは厳しいので、多くの学生が50社から100社受けています。3年前は多くて50社でした。就職活動の期間が1年半ぐらいの人もいて、長期化しています」

 関西大学キャリアセンターの吉原健二事務局長も「サンプルで出てくる傾向を見ると昨年並みか、昨年より厳しい。雇用がよくなる状況がみえない」と話します。

解決求める要請行動

12月東京で リクルートスーツパレードも

 日本共産党は今国会で何度も新卒者の就職問題をとりあげ、採用数の確保と学業と両立できる就職活動のルールを求めています。

 全日本学生自治会総連合では12月17日に就職難の解決などを求めて国会議員と経済同友会に要請する予定です。翌18日に都内で集会とリクルートスーツパレードを行います。小山農中央執行委員長は「悩みを一人で抱えている学生が多くいます。思いを語り合い、政治や企業の責任だとつかんで、大学での学びと就職が保障されるよう求めていきたい」と話しています。





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