2010年10月24日(日)「しんぶん赤旗」

検証特集 サービス残業問題と日本共産党

労働時間管理 企業に義務づけ


国会で繰り返し追及

厚労省内「参った」の声

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(写真)質問する志位和夫書記局長(当時)=2000年4月24日、衆院予算委

 労働時間は「1日8時間」というのが労働基準法の定めです。これを超えて残業させる場合は、1分単位で計算して割増賃金を払わなければなりません。

 現実には、この法律を無視して労働者をただ働きさせる企業が野放しにされ、過労死を生む長時間労働が常態化してきました。

 ただ働き残業をいまでは「サービス残業」と呼ぶようになっていますが、「サービス残業」という言葉を初めて使って国会でとりあげたのが、日本共産党の沓脱(くつぬぎ)タケ子参院議員です。1976年5月でした。以来、党国会議員団は国会のたびにとりあげ、「4・6通達」が出た2001年までに、質問回数は240回を超えています。

 追及の核心は、労働者の「自主申告」の形をとって労基署の調査を逃れる企業のやり方です。労働基準法には、労働時間の把握・管理を企業に義務づける明文規定がありません。その欠陥がこういうやり方を許してきました。

 日本共産党は、この核心を徹底的に突き、2000年3月には労働時間の管理責任を企業に義務づける「サービス残業根絶特別措置法」を提案。同年4月の衆院予算委員会で志位和夫書記局長(当時)が、サービス残業の最大の問題点は、企業が実際より少ない残業時間を労働者に「自主申告」させるやり方にあるとして、労働時間の把握と管理を企業に義務づけることを求めました。

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(写真)トヨタ工場(上)と「4・6通達」後トヨタに設置された、出退勤の記録機(右)(下)「4・6通達」後、トヨタにも導入されたサービス残業防止装置を報じる「赤旗」日曜版(2003年8月3日号)(左)(下)

 この1年後に厚労省が出したのが「4・6通達」です。党の主張をそのまま文書にしたような内容でした。

 企業に「労働時間を管理する責務がある」と明確にのべ、企業の責任で労働者の毎日の始業・終業時刻を確認し記録すること、労働者の「自主申告」ではなくタイムカードやICカードによる客観的記録を原則とすることなどを明記しています。

 当時、厚労省内では、「国会のたびに何度も共産党からとりあげられて、参った。通達には共産党の主張がかなりもりこまれた」と話題になりました。

 「4・6通達」は、文字通り「サービス残業根絶通達」として強い威力を発揮しています。それはこの通達が、法律の解釈を徹底するために政府が出すあれこれの通達と違って、労働基準法の欠陥を埋める内容になっているからです。法律を超えた規制措置―。政府がどうしても踏み込めなかった核心に、ついに踏み切らせた画期的な成果といえます。

「4・6通達」つぶし

財界の猛反撃はね返す

 通達の力に脅威を抱いた財界・大企業は、まもなく総がかりで通達つぶしに出てきました。

 口火を切ったのがトヨタの地元、愛知県経営者協会です。会員企業の調査をしたところ、通達が出て以降、労基署から指導・勧告をうけた企業が35・7%にのぼったことが判明。04年3月、愛知労働局長にたいして異例の要望書を提出しました。

 最近の労働時間管理に関する行政指導は「企業の実情に合っていない」として、労働時間の把握方法は「労使に委ねるべきである」とのべています。

 経団連も、04年12月に出した05年版「経営労働政策委員会報告」で労働監督行政について「突如として指針や通達を根拠に労使での取り組み経緯や職場慣行などを斟(しん)酌(しゃく)することなく、企業にたいする指導監督を強化するといった例が多く指摘されている」と、「4・6通達」を名指しまでして攻撃しました。

 さらに財界は、政府の経済財政諮問会議、規制改革会議を使って、ホワイトカラー労働者を残業代支払いの対象外にする「ホワイトカラー・エグゼンプション」制度を導入しようと画策し、閣議決定まですすみました。

 当時の規制改革会議のメンバーだった小(こ)嶌(じま)(典明(のりあき)大阪大学大学院教授は後に、著書『職場の法律は小説より奇なり』で、この動きについて「4・6通達」にたいする「危機感から生まれた、起死回生の提案でもあった」とのべています。

 しかし、この「起死回生」策は失敗に終わりました。

 日本共産党が「労働法制改悪阻止闘争本部」を設置し、労働者、労働組合とともに大きな反対運動を展開したからです。

 小嶌氏は「一部の政党や労働組合による『残業代ゼロ法案』キャンペーンが活発化し」て、挫折を余儀なくされたと残念がっています。

 財界・大企業による「4・6通達」つぶしを打ち破り、サービス残業の根絶のために発揮した日本共産党の存在は、いま改めて大きな光を放っています。(昆弘見)





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