2010年10月20日(水)「しんぶん赤旗」

COP10の課題(中)

各国共通の行動目標

日本共産党地球環境問題対策チーム責任者 笠井衆院議員に聞く


 COP10が担う課題の第一は、2010年以降の目標の採択です。前回ふれたGBO3(「地球規模生物多様性概況第3版」)での「10年目標は達成に失敗した」という評価を踏まえ、生物多様性の保全と持続可能な利用に向けた各国共通の行動目標を定めなければなりません。

 GBO3の前書きで潘基文(パン・ギムン)国連事務総長は、「現状は、生態系が人類にとって重要な生態系サービスを提供する能力を破局的に減少させるいくつかの潜在的な転換点に近づきつつある」と、事態の切迫を訴えました。

 この認識を共有した上で、「人類にとっての甚大な危険」を回避するために必要な20年までの目標を決める必要があります。

「自然と共生」

 これまでの交渉では、中長期目標として50年までに「自然と共生する社会を実現する」ことで合意されています。

 しかし20年までの短期目標としては、EU(欧州連合)などが求める「効果的かつ緊急な行動を実施することにより、20年までに生物多様性の損失を止める」という達成結果を明確にした案と、「生物多様性の損失を止めるための効果的かつ緊急の行動を実施する」まででとどめる案が出されています。前者の案なら、大幅な資金増が必要だと途上国は主張しています。

 第二は、遺伝資源から生じた利益の公平な分配についての名古屋議定書の採択です。

 「遺伝資源」とは、野原や森林の植物、土の中の微生物、海洋の生物、それらから取り出される化合物、薬草や食物の原料などのことです。

 名古屋議定書の目的は、途上国が主になっている「遺伝資源提供国」の遺伝資源を、先進国企業が主になっている「利用者」が利用して利益を上げる場合、その一部を「提供国」へ配分するための管理体制を国際的に合意することです。

 途上国側が、遺伝資源を化学合成した際にできる「派生物が利益還元の対象に入らなければ議定書は意味がない」と主張するのに対し、先進国側は「遺伝資源は生物や種子に限る」と反発しています。

 遺伝子組み換え生物による損害への「責任と原状回復」の国際的ルールを決めることについては、交渉がすでに行われ、一定の合意をみています。

日本どう改善

 地球上には「生物多様性のホットスポット」と呼ばれる場所が存在します。生物の多様性は、地球上どこでも一様に分布しているわけではなく、特に豊かな場所が存在しています。そのなかでも生物多様性の危機が差し迫っていると判断されているところがホットスポットです。

 2000年に25カ所のホットスポットが選定され、05年には、さらに日本を含む9カ所が追加され、合計34カ所となりました。日本が選ばれたのは、固有の生物種が非常に多く、自然の豊かさが認識されるとともに、その保全の危機が認識されたということです。

 豊かな多様性があるにもかかわらず、日本では、ダム、道路、港湾、空港のように生態系に打撃を与える公共事業が続けられ、生態系の破壊は深刻です。とりわけ絶滅危惧(きぐ)種のジュゴンのすみかや豊かな藻場を破壊する沖縄県名護市辺野古の海への米軍基地建設計画は、生物多様性条約の視点から許されるものではありません。

 COP10の開催国・議長国として、日本がこの状況をどう改善していくのか、その足元が問われています。(つづく)





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