2010年10月18日(月)「しんぶん赤旗」

農業関連企業 相次ぎ国有化

安価な肥料で農家を支援

野党などから批判

ベネズエラ


 【メキシコ市=菅原啓】南米ベネズエラのチャベス政権は10月に入り、農業関連の大企業3社を相次いで国有化しました。政府側は農業生産に必須の肥料や種子の生産、流通が私企業に独占されている状況を打ち破り、中小農家を支援し、安価な農産物を供給するための措置だと説明しています。


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(写真)ベネズエラ国営石油が運営し、食料品を安価に販売する店。ガラスには「食料主権のために」の文字が見えます=9月28日、カラカス(菅原啓撮影)

 国有化されたのは、野菜の種子販売の96%を独占していたアグロイスレニャ社、米伊資本が中心の肥料生産最大手フェルティニトロ社、化学肥料や農業機械用潤滑油を扱う大企業ベノコ・グループです。

 ベネズエラは、農業生産に適した広大な国土をもっています。しかし石油収入に依存する傾向が強まるにつれて、国内の農業生産が放棄されてきた歴史があります。チャベス政権は食料主権の確立を掲げ、農産物の国内生産を奨励してきました。

 政府は、3社についても、農業生産の増大を図る目的で、燃料や原料に使う石油を通常より安く供給するなどの優遇策をとってきました。

 政府の見通しによると、国内の農業生産で必要な尿素肥料は130万トンですが、フェルティニトロ社は1社で150万トンを生産しながら、そのほとんどを輸出に回していました。

 国有化の責任者に任命されたラミレス・エネルギー相は、政府が尿素肥料を調達する際に、同社は生産量の10%までしか出さないという制限を設け、価格も不当につり上げていたと告発しています。

 ベネズエラ国営通信は、国有化措置によって、種子や肥料などの価格が4割から6割安くなると報じています。

 野党・正義第一党の幹部フリオ・ボルヘス氏は今回の措置を農業分野の「没収・占領」という「誤った道をとっている」と批判。財界団体なども、「私有財産を脅かす」として反対を表明しました。

 一方、中小の生産者が加盟する全国農牧業者連合のアグスティン会長は、生産コスト引き下げにつながる今回の措置を歓迎。国有化反対論については、正当な補償金を支払って、公共の利益のために私有財産を接収する措置は憲法に定められた適切なやり方だと反論しています。

 農業経済の専門家フランコ・マンリケ氏は、農業生産コストの低下は、市場に出回る農産物の価格低下にもつながると指摘。「国民はコメ、ジャガイモ、タマネギ等々を手ごろな値段で入手できるだろう」と語っています。

 野党系のマスコミは反対キャンペーンを強めていますが、農民などを中心に各地で国有化支持のデモが行われています。





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