2010年10月18日(月)「しんぶん赤旗」

全生園に保育所誘致

「ハンセン病差別なくす」

東京・東村山


 ハンセン病元患者への強制隔離政策の象徴だったハンセン病国立療養所に保育所が建設され子どもたちの歓声が響く―。そんな計画が東京都東村山市の多磨全生園で具体化に踏み出しました。園内の2000平方メートルを整地し事業者を公募、2012年4月保育所開設が目標。市と同園自治会が13日、会見で発表しました。厚生労働省の機関である国立療養所に外部の施設が誘致されるのは初めてのことです。


地図

 全生園入所者の平均年齢は81・7歳(10月15日時点)。高齢化のなかで、療養所を地域住民が使えるようにし入所者と共生していくことは緊急の課題です。

小池氏ら尽力

 2年前に市内の民間保育園から「園庭が狭く建物も老朽化した。全生園の土地の一部を借りられないか」と相談があったのがきっかけ。全生園、入所者自治会が誘致を計画し、労働組合、市民団体、地元の日本共産党が力を合わせ実現に向けて運動しました。保育所待機児童が200人を超える市も協力しました。

 その中で懸念されたのが国有地である土地の賃料問題です。市側は安価な賃料を要求。共産党も国会議員団が09年12月に厚生労働省に申し入れ、10年3月には小池晃参院議員(当時)が厚労委で「法改正も含め無償貸与を」と求めていました。

 今回、1平方メートル年1329円で厚労省と市が合意しました。

 全生園入所者自治会の佐川修会長(79)は「戦後もしばらく断種手術が行われていました。私らは子どもを持つことが許されなかった。小さい子どもを見ると自分の孫のように思える。最期の時は子どもの声のなかで迎えたい」と話します。

新しい風吹く

写真

(写真)亡くなった4000を超す人の遺骨が安置されている納骨堂。老朽化したものを1986年に入所者の寄付金で再建しました=東京・多磨全生園

 「ようやく療養所に新しい風が吹き始めた」と言うのは全国ハンセン病療養所入所者協議会の神美知宏会長(76)です。

 「ハンセン病は抵抗力の弱い幼い子どもがかかりやすいという誤った説が流されてきました。療養所に保育園ができることは差別をなくす上で社会への強力な発信になります」

 今回の決定を評価する一方で、神会長は厚労省のハンセン病問題対策を批判します。

 「ハンセン病問題の全面解決のための基本法は厚労省の机の上でほこりをかぶっています。療養所の職員が減らされ、手足が不自由な入所者に食事介助ができないこともある」

 前出の佐川全生園入所者会長は言います。

 「全生園を『人権の森』として残す構想もすすめています。地域との交流がすすみ人権の大切さを学べる場として全生園を残していきたい」


 ハンセン病問題 らい菌感染により末しょう神経や皮膚が侵される病気がハンセン病。1931年の「癩(らい)予防法」により全患者への強制隔離政策がとられ過酷な作業、断種手術などの人権侵害が行われました。43年に治療薬が開発されたのに国による隔離政策は96年まで続けられました。98年から国賠訴訟が起こり2001年、元患者側が全面勝訴。08年には元患者の福祉増進、名誉回復をうたったハンセン病問題基本法が成立。国立療養所を地域住民に開放することも可能になりました。





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