2010年10月13日(水)「しんぶん赤旗」

要介護認定制度

発案者も“やめてみれば”

専門家の判断で適正に


 介護保険を利用する入り口になる要介護認定制度のあり方について、幅広い団体・個人の間で議論が起きています。コンピューター判定を主軸に、保険で受けられる介護の内容と費用(限度額)を機械的に決めるのが現在の認定制度。これを廃止し、専門家の判断で必要な介護を適正に提供する仕組みをめざそうという主張も広がりつつあります。(杉本恒如)


 きっかけは、昨年の要介護認定制度の改悪でした。寝たきりの人の「移動」についての判断を“全介助”から“自立”へと正反対に変えるなど、心身の状態が同じなのに要介護度を下げる内容でした。認定制度改悪による給付費削減の狙いも、日本共産党の小池晃前参院議員が厚労省の内部文書で暴きました。

 時の政権の思惑で、受けられる介護が入り口で絞り込まれてしまう―社会保障の介護制度がこれでいいのか。根本的な疑問と批判が広がりました。

 日本共産党は、改悪反対の論戦で一定の改善をかちとると同時に2009年2月、「機械的な利用制限のしくみ」である認定制度の廃止を提言。ケアマネジャーなど専門家の判断で適正な介護を提供する制度をめざそうと呼びかけました。

 共産党の調査で、認定で認められる限度額内では介護が足りずに「我慢を強いられている人がいる」と答えた事業所が6割近くに上る実態も明らかになっています。

廃止を掲げる

 認定制度の“発案者”とされる兵庫県立大学大学院の小山秀夫教授も「要介護認定をやめてみるという方法もある」(09年2月『月刊ケアマネジメント』)と提起。多職種のチームで必要な介護を判断する欧州の国の方法が「いちばんいいんじゃないか」と語りました。

 8月の厚労省の社会保障審議会介護保険部会では、認定制度の是非が議論されました。「高齢社会をよくする女性の会」の木間昭子理事は独自調査で、限度額内で提供される介護では在宅生活が難しい、認知症の状況が反映されない、との声が多いと訴えました。

 全国に約1万人の会員がいる「認知症の人と家族の会」は6月に提言を発表し、認定制度の廃止を掲げました。同会の「世界アルツハイマーデー記念講演会」(9月19日)は、認定制度の是非を最大のテーマとしました。

 認定制度の創設にかかわった大阪市立大学大学院の白澤政和教授は、この講演会で「廃止」に賛同。住環境などを無視した認定は本当の介護の必要性を反映しないと指摘し、「専門家の裁量に信頼を置く制度にしていったらどうか」と語りました。他方、認定制度で「給付の適切さが確保される」(元厚労省老健局長で大阪大学大学院の堤修三教授)との意見もありました。

 認定制度について京都女子大学の石田一紀教授は「単に機械的な認定か多職種の協議による認定かという問題ではない。現在の制度は給付の量と認定者を政策的に制限・選別するだけでなく、介護の本質を切り捨てている」と批判します。

真の社会保障

 高齢者の心身の変化に柔軟に対応すべき介護は本来、多様で連続性のある労働です。ところが認定制度は、移動・食事などの部分に細分化して介護の質を画一化した上で量を測ります。介護の真髄であるコミュニケーション、主体的に生きる意欲を引き出す働きかけなど、介護の本質を評価しません。

 石田氏は「介護保険制度を国民の運動で真の社会保障制度へと変えていくときです」と語ります。


 要介護認定 市町村による訪問調査、コンピューターによる1次判定、専門家の2次判定からなります。非該当、要支援1・2、要介護1〜5の8段階で認定。非該当になると介護保険を利用できません。要介護度ごとに、保険で受けられる介護の内容と費用(限度額)が変わります。限度額を超えると全額自己負担になります。



■関連キーワード

もどる
日本共産党ホーム「しんぶん赤旗」ご利用にあたって
(c)日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 TEL 03-3403-6111  FAX 03-5474-8358 Mail info@jcp.or.jp