2010年10月6日(水)「しんぶん赤旗」

社会リポート

武富士更生法申請

どうなる過払い返還

“生活再建の矢先だったのに”


 「過払い金の返還で生活再建しようという矢先だったのにどうなるのか」―サラ金大手・武富士の会社更生法適用申請(9月28日)で、高金利被害者に不安と怒りが広がっています。本来、払う必要のなかった過払い利子を被害者に戻すことは最優先の課題です。(柴田善太)


被害者に不安と怒り

写真

(写真)会社更生法の適用を申請した武富士。営業を終えた本社ビルのロビーには、創業者の故武井保雄氏の写真が掲げられていました=9月28日、東京都新宿区

 コンピューターソフト開発会社を経営してきた川崎市の早川幸子さん(62)=仮名=は「今年の1月、裁判を起こし過払い金220万円返還で7月29日、武富士と和解しました。払い込み予定日は今月8日。このお金で中断していた事業を再開していこうと思っていたのに…」と話します。

狙いが見え見え

 幸子さんの夫(60)も並行して武富士を裁判で訴え同時期に50万円の過払い金返還で和解しました。夫の和解金は先月払われましたが、幸子さんの分の返還は今月。幸子さんは「金額が大きいので会社更生法適用申請後に回し、支払いを逃れようという狙いが見え見え」と指摘。「私たちの支払いが1日でも遅れると武富士から携帯、会社、自宅と1日3回は催促の電話がかかってきました。それなのに自分たちが『赤字だ』といって過払い金を返さないのは許せない」と憤ります。

和解したばかり

 東京都世田谷区の山本謙治さん(68)=仮名=は武富士が会社更生法を申請した前日の9月27日に東京簡易裁判所で過払い金返還で和解したばかり。「和解の翌日、経営破たん。これで過払い金が返ってこないことになればこんなに人をばかにしたことはない。裁判所の調停もなんだったのかということになる」と言います。

 世田谷区の丸井正さん(44)=仮名=のもとに突然9月27日付で「債権譲渡の通知」が送られてきました。

 発送主はSBIホールディングス株式会社(北尾吉孝代表取締役)の子会社の債権買い取り会社でした。

 丸井さんは「月々の返済額を武富士と交渉し減らさせてきたのに、もともとの条件に戻っています」と肩を落とします。

 武富士は9月28日付「お知らせ」で「過払い金は更生債権として扱われ…届出債権が多額に上った場合は弁済率が低くなる可能性」があると開き直っています。

不法利得の返還

 全国クレジット・サラ金問題対策協議会代表幹事の木村達也弁護士は「もうけを目的に武富士に融資してきた銀行などの資金と違って、過払いは庶民が法的に払う必要のないお金を払わされてきた不法利得の返還ですから優先的に扱われるべきです。創業家の武井一族は巨額の財産を築いてきたのだから、私財投入も含めて過払い金返還を勝ち取っていかないといけない」と話しています。


 過払い金 出資法上限(29・2%)と利息制限法上限(15〜20%)の間の金利がグレーゾーン金利と呼ばれ高金利被害の温床となってきました。2006年1月の最高裁判決で利息制限法を超える金利で貸し出す高金利商法を認めない判決が出て、払いすぎた金利分を取り戻す過払い金返還訴訟が急増しました。06年12月成立、今年6月に完全施行された改正貸金業法によって出資法の金利上限が20%に引き下げられグレーゾーンが撤廃されました。





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