2010年10月6日(水)「しんぶん赤旗」

日銀 事実上のゼロ金利

「包括緩和」 投機的商品買い入れも


 日銀は5日に開いた金融政策決定会合で、政策金利を現行の年0・1%から年0〜0・1%に引き下げる追加の金融緩和策を全員一致で決め、事実上のゼロ金利政策を4年3カ月ぶりに導入しました。国債のほか投機的な金融商品まで買い入れるため、5兆円程度の基金創設も決めました。「景気の下ぶれリスク」に対応するため市場に大量の資金を供給するというのが理由ですが、バブル経済の再発など金融システムへの悪影響が懸念されます。

 今回の決定では、1年後をめどに、長短期の国債約3兆5000億円、コマーシャルペーパー(CP)や社債、投機商品である指数連動型上場投資信託(ETF)、不動産投資信託(J―REIT)など約1兆円、計5兆円の金融資産を買い進める基金をつくります。

 国債購入額については、銀行券の発行残高以下に抑えるルールがありますが、この基金については例外としました。国債を対象とすることについては、須田美矢子審議委員が「バブルを生じるリスクが高い」として反対しました。

 会合後に発表した声明で、日銀は今回の決定について「異例の措置」であることを強調しました。

 景気の現状について声明は、「海外経済の減速や為替円高による企業マインド面への影響などを背景に、改善の動きが弱まっている」と判断を下方修正。先行きについても「成長率は下振れて推移する可能性が高い」と強調しました。

 白川方明日銀総裁は記者会見で、一連の金融緩和政策を「包括的緩和」と命名しました。


 ゼロ金利政策 中央銀行が金融調節の対象とする短期市場金利(政策金利)を0%にする政策。銀行が資金をただで市場から調達できるようにし、貸し出し増加による景気刺激効果を狙います。バブル崩壊後の不況が長引く中、日銀は1999年2月から、中断を挟んで2006年7月まで実施しました。今回の導入は4年3カ月ぶりですが、リーマン・ショック後の08年12月に米連邦準備制度理事会(FRB)が採用した事実上のゼロ金利政策と同様、基準とする0・1%から0%まで金利が低下することを容認するもので、0%を明確な目標とはしていない点が従来と異なります。


解説

日本経済のゆがみを拡大

 日銀が自ら「異例の措置」と呼ぶ金融緩和は、この間の急激な円高への対抗措置としてとられたものです。しかし、大銀行、大企業への資金供給をさらに増やす政策で日本経済にてこ入れできるでしょうか。白川方明日銀総裁の記者会見でも、「バブルを生じるのではないか」「供給された資金が新興国に流れるのではないか」などの疑問が出されました。

 何より、今回決めた措置では、日本経済が陥っている問題を踏まえた解決策が見られません。

 「円高危機」が繰り返される背景には、ごく少数の大企業が労働者と中小企業の犠牲の上に、果てしないコスト削減を進め、世界でも突出した「国際競争力」を強めてきたという「円高体質」があります。大企業は今、大変な“金余り”状態です。その一方、仕事が激減している中小零細企業は資金難に苦しんでいます。大企業によって、労働者はリストラに、中小企業は一方的な「仕事切り」に見舞われています。この問題を放置したまま、大企業・大銀行支援の「金融緩和」を強めたのでは、経済のゆがみをさらに拡大することになります。

 繰り返されてきた「円高」に対して「対抗力」をつけてきた大企業は、「円高の悪影響」を声高に叫び、政府・日銀に大企業支援策を加速させることによっていっそうの「国際競争力」強化を狙っています。

 国内経済が疲弊しきったままでは、日銀がいくら金融緩和をしても、資金が実体経済に流れることはありません。アメリカではすでに同様の政策が取られていますが、実体経済は低迷したままです。その一方で、投機活動の活発化が指摘されています。

 白川総裁が「包括緩和」と呼ぶ金融緩和策は、投機を活気づかせるだけの結果に終わりかねません。金融面で円高危機に対応するのであれば、中小企業に資金が回り、実体経済にてこ入れするような政策が必要です。(山田俊英)





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